研究課題/領域番号 |
24590051
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
中馬 寛 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (20304545)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 薬物・タンパク質相互作用 / 定量的構造活性相関 / 超精密予測 / 自由エネルギー変化の線形表現 / フラグメント分子軌道法 / ノイラミニダーゼ阻害剤 / MMP阻害剤 |
研究概要 |
当初の年度計画に従い、LERE-代表エネルギー項評価の精密化およびLERE-QSARを幾つかのタンパク質・リガンド系での検証を行った。 1.LERE-代表エネルギー項評価の精密化 (1) 溶媒和エネルギー項 (delta Gsol);連続溶媒和モデル・分子軌道法(SCRF-MO)、一般化Born法(GB)、Poisson Boltzmann法(PB)を有機分子への適用し、SCRF-MOが最も良好に実測値のdelta Gsolを再現すること、リガンド・タンパク質系に対しては、SCRF-MOとGB(PB)を組み合わせた方法(hybrid)が有効かつ実用的であることを提案した。(2) 分散エネルギー項;Hartree-Fock法による相互作用エネルギーに古典論の分散相互作用項(D)を加える方法 (HF-D)を幾つかの系に適用し、計算時間はかかるがより厳密な方法(MP2, CCSD)による結果を十分な精度かつ短時間の計算で再現できることを確認した。(3) エントロピー項;等温熱測定実験に関する文献調査からエントロピー・エンタルピー補償則 [-T delta S = (-a) delta H + constant] が良好に成立し、かつ -a (勾配)が0 < a < 1の範囲にあることを確認した。準調和近似による配座エントロピー計算をtamiflu等のシアル酸誘導体・neuraminidaseの系に適用し、実測結果を良好に再現することを示した。 2. LERE-QSARの応用と検証 Tamiflu等のシアル酸誘導体・influenza/human neuraminidases、biphenyl sulfonamide誘導体・MMP等の系についてLERE-QSARにより~1 kcal/mol以内の精度で実測活性値を再現できることを報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載した通り、当初の計画に従い、ほぼ順調に進んでいる。連続溶媒和モデルによる溶媒和エネルギー項(Gsol)の理論計算値と分配係数 log P との定量的対応についてはさらに検討が必要である。溶媒和エネルギー項の有効かつ迅速な方法として現在提案しているhybrid法[SCRF-MO/GB(PB)]についてはより多くの系でその有用性の確認が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
溶媒和エネルギー項の有効かつ迅速な方法として現在提案しているhybrid法[SCRF-MO/GB(PB)]についてはより多くの系でその有用性の確認を進める。結合活性の変動が分配係数log Pのbilinear 曲線を示すトリアジン誘導体・DHFR(+NADPH)系、アゾール化合物・CYP P450(2B6, 51, 3A4等)系についてのLERE-QSAR解析を進めることで両者の対応関係を定量的に明らかにする。アゾール化合物・CYP P450(2B6, 51, 3A4等)系の解析はヘム鉄(Fe)の形式電荷とスピン状態を考慮した電子状態計算と大規模な配座探索計算(結合ポーズとリガンドおよびP450の結合に伴う配座変化)を行う必要があり、このための準備を進めていく。また、すでに解析が終了しているbenzenesulfonamide誘導体・carbonic anhydrase系と同じく亜鉛(Zn)含有系であるbiphenyl sulfonamide誘導体・MMP9等の相互作用様式の定量的比較を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
より高精度の代表相互作用エネルギー項の評価 [分極関数を導入したHartree-Fock (HF/6-31G*)相互作用エネルギー項、溶媒和エネルギー(hybrid法による評価)項、分散相互作用(MP2, HF-D)項、配座エントロピー項(準調和近似)、金属(Zn, Fe)・配位子間相互作用]と対応するLERE-QSAR解析のタンパク質・リガンド系への適用を考慮して、当初の計画通り、ハイパフォーマンス・コンピュータの導入(HPC SYSTEMS社製 HPC5000-XW218R2S相当)による演算能力の増強を、旅費(国内・国外)については前年度と同額の支出を予定している。
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