研究実績の概要 |
当初の年度計画に従い、1. LERE-代表エネルギー項評価の精密化および2. LERE-QSARを幾つかのタンパク質・リガンド系での検証を行った。 1. LERE-代表エネルギー項評価の精密化 (A) リガンド・タンパク質間の結合に大きな寄与をする分散力相互作用エネルギーの新しい評価法HF-Dtq法を提案しその有用性を確認した; HF-Dtqは非経験的分子軌道法HF(Hartree-Fock)から得られる分子間相互作用エネルギーに原子間距離に応じて古典的Lennard-Jones型分散力エネルギー項を加算する。HF-Dtqは比較的簡潔な表式と少ないパラメータにもかかわらず、分子間相互作用エネルギーを 0.6 kcal/mol以内で再現することが可能であり、従来のMP2法に比較し大幅な精度の向上と計算時間の短縮が可能とした。(B) LERE-QSARの結合自由エネルギー変化 (ΔG)の手順とは異なる自由エネルギー評価法 Bennett’s acceptance ratio (BAR)-Double annihilation (DA)法による一連のリガンド・タンパク質間のΔGを評価し、高精度の定量的構造活性相関解析が可能なことを示した。 2. LERE-QSARの応用と検証 (A) 従来の平衡論過程(すなわち阻害平衡定数)から速度論的過程(酵素触媒反応速度定数)へのLERE-QSAR法の適用拡大検証; 一連の馬尿酸フェニルエステル・トリプシンの触媒反応速度への拡張応用, (B) 亜鉛含有タンパク質Matrix Metalloproteinase-12 と一連のアリルスルフォン誘導体へ高精度の分散力相互作用エネルギー項を導入したLERE-QSAR法の適用, (C) BAR-DA法を用いた一連のGlycogen Synthase Kinase-3β誘導体の定量的構造活性相関; いずれの場合においても十分な精度 (<0.6 kcal/mol)での実測のΔGを予測することを示した。
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