研究課題/領域番号 |
24590056
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
木下 誉富 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90405340)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シグナル伝達 / 受容体型キナーゼ / がん / X線結晶構造解析 / 活性変異体 |
研究概要 |
受容体型チロシンキナーゼFibroblast Growth Factor Receptor (FGFR) は細胞外から細胞内へのシグナル伝達を仲介し、繊維芽細胞などの増殖・分化を誘導する。正常組織ではFGFRはリガンドとなるFGF依存的に自己リン酸化して活性化する。一方、ガン組織においてFGF非依存的な恒常的活性を示すFGFR変異体が発見されている。本研究では、X線結晶構造解析、分子生物学的改変及び酵素機能解析を行い、FGFR3に特有の恒常的活性変異体K650M及びG697Cの活性化メカニズムを原子レベルで解明する。この成果を基盤として、生命維持に必要である野生型に作用せず、恒常的活性変異体にのみ作用する低副作用抗ガン剤の論理的創出研究が始動する。 H24年度は野生型と活性変異体について、X線結晶構造解析に向けた結晶化及び酵素機能解析を行った。野生型及びG697C変異体について結晶化条件のスクリーニングを行い、双方とも100×50×5 m程度の結晶を得た。これらの結晶を用いて、高エネルギー加速器研究機構においてX線実験を行ったところ、8Å分解能の回折斑点を観測した。この成果についてH24年度日本結晶学会年会で報告した。さらに遺伝子操作を行い、K650M及びN540T変異体のタンパク質サンプルを取得した。活性発現メカニズムの解析の基礎データとして、野生型及びG697C、K650M、N540T各変異体について酵素機能の解析を行った。その結果、変異体の活性はすべて野生型に比べて弱いこと、Km値においてはG697Cでは野生型に比べて大きく、K650M及びN540Tでは逆に小さくなることが明らかとなった。このように各変異体は基質ATPの結合能に変化を及ぼす構造変化が生じており、このことが活性発現に関連していると予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野生型及びG697C変異体の構造解析まで完了することが本年度の目標のひとつであったが、結晶成長に難があり解析レベルのX線回折データ取得に至らなかった。一方、酵素機能解析については予定を繰り上げ、野生型及び予定しているすべての活性変異体について完了した。
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今後の研究の推進方策 |
結晶成長に悪影響を与えているタンパク質の不安定性を改善するために、①構造の柔軟性が危惧されるC末端領域の切断、②遊離システインの置換を行う。このときに活性やKmなど酵素機能に影響を与えないことを確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費は当初計画のとおり、遺伝子操作、タンパク質発現、精製、結晶化、酵素機能解析に関する消耗品及び試薬に使用する。旅費は高エネルギー加速器研究機構におけるX線データ測定、第13回日本蛋白質科学会などでの成果発表のために使用する。
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