研究課題/領域番号 |
24590058
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
合田 浩明 北里大学, 薬学部, 准教授 (60276160)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | SHIP2 / ドラッグデザイン / 分子ドッキング計算 / 結合自由エネルギー計算 / 分子動力学シミュレーション |
研究概要 |
SHIP2に対して強い阻害活性を示す既知SHIP2阻害剤(全4化合物)、及び我々が最近得た新規SHIP2阻害剤CPDAについて、Ligand-based drug design(LBDD)手法の一つである分子重ね合わせ計算を行った。その結果、これら全5つの阻害剤の3次元的な物理化学特性が互いによく重なるような分子アライメントを得ることができた。この分子アライメント中の各化合物の配座は、結合配座(SHIP2に結合する時の配座)の候補と見なすことができる。 また、最近になってSHIP2の触媒ドメインのX線結晶構造が報告された。そこで、上記のLBDDに加えて、タンパク質の立体構造を利用したドラッグデザイン(Structure-based drug design、SBDD)も展開することにした。そこで、先ず、SHIP2触媒ドメインのX線結晶構造について水溶液中での分子動力学シミュレーションを行い、SHIP2触媒ドメインの溶液中での構造アンサンブルを算出した。次に、SHIP2の基質結合部位周辺の鍵穴構造に関するクラスター解析を行い、互いに構造が異なる代表鍵穴構造(全8個)を抽出した。この代表鍵穴構造を使用することにより、今後行う予定であるCPDAとSHIP2のドッキング計算において、タンパク質側の柔軟性を考慮できるようになる。 さらに、ドッキング計算の手順の構築を行った。構築した手順は、SHIP2と相同性が高いINPP5Bとphosphatidylinositol 4-phosphateの複合体X線結晶構造を非常に良く再現できた。このことは、構築した手順がCPDAとSHIP2の複合体モデルを得るのに妥当であることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先ず、既知SHIP2阻害剤(全4化合物)と我々が最近得た新規SHIP2阻害剤CPDAについての分子重ね合わせ計算を完了し、全5つの阻害剤の分子アライメントを得ることができている。今後、この分子アライメントを利用して、各化合物の原子団を組み合わせたようなキメラ化合物をデザインすることにより、CPDAとは異なる構造を持つ新規SHIP2阻害剤を創製することが可能である。 また、SHIP2の触媒ドメインのX線結晶構造が報告されたことにより、SBDDも展開可能になった。既に、SHIP2の代表鍵穴構造の算出とドッキング計算の条件検討が完了しており、今後速やかに、CPDAとSHIP2の複合体モデルを構築することができる。
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今後の研究の推進方策 |
先ず、CPDAの構造最適化研究を行う。最初に、構築したドッキング計算手順により、CPDAとSHIP2の複合体モデルを構築する。そして、得られたモデル中の結合様式を観察することで、SHIP2との相互作用エネルギーが改善されるようなCPDA誘導体をデザインする。次に、精密結合自由エネルギー計算を行い、デザインされたCPDA誘導体の結合自由エネルギーがCPDAより改善されるかどうかについて評価する。そして、有望な誘導体をいくつか選択し、実際に合成及びSHIP2阻害活性測定を行う。 また、CPDAとは異なる骨格を持つ新規SHIP2阻害剤を同定する目的で、SHIP2の代表鍵穴構造を利用したイン・シリコスクリーニングを行う。すなわち、SHIP2の代表鍵穴構造に対する化合物データベース(約400万化合物)の高速ドッキング計算を行い、SHIP2の代表鍵穴構造にうまく結合できそうな候補化合物を、数十個程度、素早く抽出する。そして、抽出された化合物の購入及びSHIP2阻害活性測定を行う。 さらに、既に得られている既知阻害剤の分子アライメントに基づいて、各化合物の原子団を組み合わせたようなキメラ化合物をいくつかデザインする。これらキメラ化合物の可能性についても、分子ドッキング計算及び精密結合自由エネルギー計算により評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、計算機パワーが必要となるイン・シリコスクリーニング及び精密結合自由エネルギー計算を多数行う予定である。そこで、次年度において、高速計算が可能なワークステーションの購入を行う。また、計算結果を保存するための各種バックアップメディアが必要となる。 また、CPDA誘導体の合成のために、有機合成用試薬およびガラス器具などが必要である。また、合成された誘導体及びイン・シリコスクリーニングにより抽出した化合物についてSHIP2阻害活性およびインスリンシグナル増強作用を評価するために、生化学用器具および生化学用試薬も必要である。
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