研究課題
平成24年度に構築した分子ドッキング計算手順により、SHIP2と新規SHIP2阻害剤CPDAの結合様式モデルを得た。その結果、①CPDAはSHIP2のL538主鎖酸素原子、K541側鎖窒素原子、S564主鎖窒素原子、及びR571側鎖窒素原子と計4つの水素結合を形成しそうであること、②CPDAのフェニル基及びピリジン環がSHIP2のL538、K541、及びR571の側鎖の炭化水素領域と疎水性相互作用を形成しそうであることが示唆された。また、既知SHIP2阻害剤AS1949490についてもSHIP2との結合様式モデルを構築し、CPDA-SHIP2複合体モデルとAS1949490-SHIP2複合体モデルを重ね合わせることで、SHIP2の結合部位中でのCPDAとAS1949490の相対的空間配置(アライメント)を得た。このアライメントを、我々がLigand-based drug design手法(LBDD、蛋白質の立体構造を利用しないで、リガンドの構造のみを用いる分子設計手法)により先に構築していたCPDAとAS1949490のアライメントと比較したところ、分子同士の配向が両者で大まかに合っていることが確認された。さらに、得られたCPDA-SHIP2複合体モデルをよく観察したところ、CPDAのジフルオロベンゼン周辺にSHIP2の糖結合部位が位置していることがわかった。これより、CPDAのジフロロベンゼンに糖を付加すれば、より強力な阻害剤を創製できそうであることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
先ず、我々が独自に創製した新規SHIP2阻害剤CPDAとSHIP2の結合様式モデルを構築することができた。さらに、この結合様式モデルより、CPDAの構造最適化に関する知見も得ることができた。また、今回のSHIP2の立体構造に対する分子ドッキング計算で得られたCPDAと既知SHIP2阻害剤AS1949490のアライメントと、我々が先に行ったLBDD手法で得たアライメントが大まかに合っていることが確認された。このことは、我々が先に行ったLBDD手法が非常に有効であったことを示唆している。
先ず、CPDAの構造最適化を展開する。すなわち、CPDAのジフロロベンゼンのどの位置にどのような糖を付加すると、より強力な阻害剤になるのかについて、分子ドッキング計算及び結合自由エネルギー計算により検討する。そして、有望なCPDA誘導体については、合成及び阻害活性測定を試みる。また、CPDA-SHIP2複合体モデルを利用したインシリコスクリーニングを行うことで、異なる骨格を有する新規SHIP2阻害化合物の同定を目指す。
分子ドッキング計算の条件検討、及び結合親和性評価関数の検討などが比較的スムーズに進んだため、計算結果保存用の大容量メディアの数が少なくて済んだため。平成26年度に行う構造最適化では、分子ドッキング計算、結合自由エネルギー計算、およびインシリコスクリーニングなどを大規模に行うため、計算結果保存用の大容量メディアがこれまで以上に必要になる。また、CPDAに基づいた新規SHIP2阻害剤の合成、および合成した化合物のSHIP2阻害能の評価のために、有機合成試薬、生化学試薬、実験器具などを購入する。
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