各種リポソーム構成脂質が、P糖たんぱく質(P-gp)の基質として知られているドキソルビシンの膜透過に及ぼす影響を評価した結果、リポソームの主構成成分として汎用されるリン脂質やコレステロールと比較して、ポリエチレングリコール(PEG)修飾を施したリン脂質が極めて高いドキソルビシン膜透過の抑制作用を示すことが明らかとなった。また、同濃度のリポソーム製剤が細胞内に取り込まれる条件下においては、PEG修飾リン脂質をリポソーム構成脂質としてドキソルビシンを内包させた場合は、PEG修飾リン脂質を含まないリポソームより、ドキソルビシンによる細胞毒性効果が増強された。そこで、リポソーム製剤の脂質組成と細胞毒性・薬物放出性との関連性について調べた。PEG修飾リポソームについて、リン脂質組成やPEG鎖長の異なる複数のリポソームにドキソルビシンを内包させ、HeLa細胞に対する細胞毒性を調べたところ、カチオン性リン脂質を有するリポソームで細胞毒性が高かった。この傾向は、細胞内へのドキソルビシン取り込み量と相関していた。一方、PEG鎖長の違い(平均分子量2000及び5000)は、細胞内へのドキソルビシン取り込み量やリポソームからのドキソルビシンの放出量に影響を与えなかった。以上、本研究によりドキソルビシン内包リポソームのin vitro細胞毒性におけるPEG修飾リン脂質の関与が示唆されたとともに、リポソーム構成脂質のPEG修飾の有無や電荷等がin vitro細胞毒性に大きな影響を与えることが明らかとなった。
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