研究課題
基盤研究(C)
プロテアソームは真確細胞に必須のタンパク質複合体であり、近年高等動物ではプロテアソームが分子・機能的多様性を獲得し、高等動物特有の生命現象に重要な働きをしている事が明らかになり始めている。また、プロテアソーム機能の減弱により神経変性疾患など様々な病態発症の原因となる事も知られ、がん細胞においてはプロテアソームの発現が亢進していることも知られていることから、プロテアソーム機能の異常は細胞にとって極めて重要である。近年、我々はプロテアソーム機能調節因子の探索から、新規プロテアソーム会合因子としてPI31を同定した。PI31ノックダウンハエ系統を作製すると、全身におけるノックダウンで致死となり、羽や複眼におけるノックダウンで羽の形成異常や加齢依存的な個眼の色素脱落など様々な表現型を示し、発生のみならず組織の機能維持にも重要である事が明らかとなった。さらに、筋肉におけるノックダウンでは加齢依存的な運動能の低下とともに死亡率の増加を観察した事からも、PI31が加齢にともなう細胞内の恒常性維持に働く事が強く示唆された。また、すでにPI31について遺伝学的相互作用因子の探索より神経変性疾患との関与を示唆する結果を得ていた事からさらに研究を進め、新たな相互作用因子を同定した。これら因子と機能的な関わりについて特にプロテアソーム機能に着目しつつ生化学的解析を進展中であり、哺乳類細胞なども用いて細胞生物学的解析も行なっている。
2: おおむね順調に進展している
当初の準備段階におけるハエ系統についての知見を元に、様々な表現型について観察するとともに、その原因となる分子機構の詳細について徐々に解析が進み、統合的な理解が可能となりつつあることから、順調に研究が進展していると考えている。遺伝学的な解析については予想外の進展を見せている部分もある事から、研究開始当初の予想よりも新規性の高い研究となる可能性を感じており、分子機構解明のための解析をより重点的に推進する事で研究目標を達成できると予想している。
遺伝学的解析による遺伝学的相互作用因子の探索を今後も進め、既に見出している経路の妥当性を検討するとともに、さらなる新規経路とのクロストークの発見を目指す。生化学的解析および分生生物学的解析を並行して行ない、プロテアソーム及びPI31の機能解析と表現型を結びつける分子機構の解明を重点的に行なう。様々な表現型について解析を行なうため、多様なアプローチで柔軟に研究を行い、統合的な理解を進めるように研究の焦点を明確にする。
主に研究用試薬の購入とハエ系統の購入に充てる。個体や培養細胞を用いた生化学解析や分子生物学的解析を主に行なうため、イムノブロット関連試薬や制限酵素、ポリメラーゼ等酵素および遺伝子発現解析のためのリアルタイムPCR関連試薬などが主要なものとなる。研究の進展により遺伝学的解析を大規模に行なう事も考えられるため、ハエ系統の購入額は余裕を持って準備をしている。また、哺乳類における解析も並行して進めているため、マウスや動物細胞実験関連にも研究費を充てる予定である。
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Biology Open
巻: 2 ページ: 170-182
10.1242/bio.20123020