研究課題
昨年度得られた研究成果から我々は脂肪組織に発現しているGPR43の機能に関して、そのGpr43遺伝子を欠損させたマウス(Gpr43KOマウス)は体重、脂肪重量の増加という肥満の傾向を示し、また逆にGPR43を脂肪組織特異的に過剰発現させたaP2-Gpr43トランスジェニックマウス(aP2-Gpr43TGマウス)においては、Gpr43KOマウスとは逆に痩せの傾向を示すことを明らかにした。さらに今年度の研究成果として、高脂肪食負荷による肥満型糖尿病の誘導に対し、aP2-Gpr43TGマウスは抵抗性を示した。また、これらのGPR43遺伝子改変マウスにおける代謝変化が、GPR43を活性化する短鎖脂肪酸の主要な産生源である腸内細菌が原因であるかどうかを確認するために、腸内細菌が全く存在しない無菌マウスや抗生物質処置により体内の腸内細菌叢を消失させたマウスを用いて実験を行った。結果、Gpr43KOマウス、aP2-Gpr43TGマウスともに、これらのエネルギー代謝異常が消失した。さらに、このGPR43の脂肪組織直接的な機能として、筋肉や肝臓などの他のインスリン作用組織ではなく、脂肪組織でのインスリンの作用のみを選択的に抑制することがわかった。すなわち、GPR43の活性化はブドウ糖や脂肪酸等のエネルギー源を脂肪組織に取り込んで脂肪として蓄積することを抑え、脂肪組織の増大のみを防ぐことで、結果的に体全体のインスリン感受性の上昇、エネルギー利用効率を上昇させることを本年度の研究により明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
申請書に記載した研究の目的については順調に達成されつつあり、途中経過としてそれを論文発表した。
本研究課題に関しては、順調に目的を達成できつつあり、さらにこの脂肪組織GPR43とそのリガンドを産生する腸内細菌叢との関連について、新たに病態モデルマウス(特に糖尿病等のエネルギー代謝疾患)を用いた検討を行う。さらにはこの脂肪組織におけるGPR43細胞内シグナリングについて明らかにする。
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Nat Commun
巻: 4 ページ: 1829
10.1038/ncomms2852
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2013/130508_1.htm