研究課題/領域番号 |
24590081
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
新垣 尚捷 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (60151148)
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研究分担者 |
根本 尚夫 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (30208293)
山崎 哲男 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (90330208)
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キーワード | F1Fo-ATP合成酵素 / 細胞内中性脂肪 / ATP / ATP受容体 / シグナル伝達 / ミトコンドリア |
研究概要 |
細胞膜F1Fo-ATP合成酵素を介した脂質代謝調節機構に関して以下のことを明らかにした。 1.成熟脂肪細胞では、細胞膜F1Fo-ATP合成酵素により合成される細胞外ATPは、P2Y1受容体を介したシグナル伝達を介して細胞内中性脂肪量を増加させている。2.細胞内に脂肪滴の蓄積が確認できない前駆脂肪細胞ではP2Y1受容体の発現はみられないが、脂肪細胞の分化に伴って脂肪滴が蓄積するに従ってP2Y1受容体の発現が増加することを明らかにし、さらに細胞膜F1Fo-ATP合成酵素阻害剤は細胞外ATPの産生を阻害すると同時にP2Y1受容体の発現も阻害することを見出した。3.脂肪細胞の分化に伴って細胞内カルシウム量が増加し、細胞膜F1Fo-ATP合成酵素阻害剤により細胞内カルシウム量の増加が阻害されることを明らかにした。4.HeLa細胞において、NFATc4およびCaMKII betaの活性を検証する実験系が確立できた。5.F1Fo-ATP合成酵素阻害剤であるresveratrolとpiceatannolの水溶性化体である分岐型オリゴグリセロール(Branched Oligoglycerol:BGL)化resveratrolとpiceatannolの大量合成に成功し、本化合物がミトコンドリア融合活性および細胞内中性脂肪蓄積抑制活性を有することを明らかにした。6.細胞膜F1Fo-ATP合成酵素を抑制するとミトコンドリアの形態が融合型に変動することを見出した。ミトコンドリの形態制御と細胞内中性脂肪量の調節は密接に関連することから、 この結果は、細胞膜F1Fo-ATP合成酵素を介した中性脂肪量の調節にミトコントリアの形態調節が関わっていることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞膜F1Fo-ATP合成酵素を介した脂質代謝調節機構に関して、本酵素により産生された細胞外ATPがP2Y1受容体を介して細胞内中性脂肪の増加に重要な役割を果たしていることを明らかにし、F1Fo-ATP合成酵素阻害剤が細胞外ATP産生の阻害とP2Y1受容体の発現を抑制することにより細胞内中性脂肪量を減少させていることを明らかにした。これらの成果は、細胞膜F1Fo-ATP合成酵素を介したシグナル伝達経路の解明に向け大きな進展であるため本実験の達成度は80%以上と評価できる。 さらに、細胞膜F1Fo-ATP合成酵素阻害剤である水溶性BGL化resveratrolとpiceatannolの大量合成に成功し、本化合物のミトコンドリア融合活性および細胞内中性脂肪蓄積抑制活性を確認できたことは動物実験に向け大きな進展であるため、本実験の達成度は100%である。 研究成果は、第34回日本肥満学会において発表した。 しかしながら、NFATc4およびCaMKII betaの活性化を確認する実験系を確立することはできたが、細胞膜F1Fo-ATP合成酵素を介した脂質代謝調節機構との関わりについて確認できていないため、本年度の総合的な達成度はおおむね70%程度と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1.水溶性BGL化resveratrolとpiceatannolの抗肥満効果(体重減少効果と内蔵脂肪量減少効果)をマウス等の実験動物を用いて検証する。 2.NFATc4およびCaMKII betaの活性化に対するF1Fo-ATP合成酵素阻害剤の効果を解析し、細胞膜F1Fo-ATP合成酵素を介した脂質代謝調節における役割を検証する。 3. 細胞膜F1Fo-ATP合成酵素を介したミトコンドリア形態制御機構を解析する。申請者はすでに本研究とは異なる実験系で、酸化ストレスを誘導すると細胞内中性脂肪の蓄積が増加すること、さらに酸化ストレスはミトコンドリアの分裂を促進すること明らかにしている。そこで、本研究では、細胞膜F1Fo-ATP合成酵素により産生された細胞外ATPによる酸化ストレスの誘導とミトコンドリア形態制御および中性脂肪の蓄積に対するF1Fo-ATP合成酵素阻害剤の効果を検証する予定である。
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