研究課題
HSP70は変性・凝集したタンパク質を基に戻す機能を持っている。そこで私は、タンパク質の変性・凝集が原因であるアルツハイマー病にHSP70が有効ではないかと考えた。実際私は、遺伝子改変技術を用いて、アルツハイマー病のモデルマウスにおけるHSP70の産生を高めることにより、アルツハイマー病様症状(記憶学習能力の低下、老人斑の形成)を有意に抑制出来ることを見出した。さらに私は、HSPの産生を増やす薬(胃薬として30年以上も臨床で使われているテプレノン)を用いてHSP70を増加させても、アルツハイマー病モデルマウスでの記憶学習能力の低下や老人斑の形成を有意に抑制出来ることを見出した。一方、別の分子シャペロンであるGRP78もβアミロイドの産生を抑制することを見出した。一方、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)はプロスタグランジンE2(PGE2, 炎症増悪因子)を減少させることにより抗炎症作用を発揮すると考えられている。私はまず、PGE2がアミロイドβの産生を促進することを見出した。次に、PGE2の受容体(EP1~4)の内、EP4受容体がこのアミロイドβの産生促進に関与していることを見出した。さらに、アルツハイマー病モデルマウスとEP4受容体のノックアウトマウスを掛け合わせたマウスでは,アミロイドβの増加や認知機能の低下が見られないことを見出した。以上の結果は、PGE2はEP4受容体を介してアルツハイマー病の進行を促進していること、即ちNSAIDsがPGE2を低下させEP4受容体の活性化を抑制し抗アルツハイマー病作用を発揮していることを示唆している。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Invest. Ophthalmol. Vis. Sci.
巻: 55 ページ: 2547-66
DOI:10.1167/iovs.13-1385