研究課題/領域番号 |
24590086
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
中西 真弓 岩手医科大学, 薬学部, 准教授 (20270506)
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研究分担者 |
二井 將光 岩手医科大学, 薬学部, 教授 (50012646)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 一分子観察 |
研究概要 |
本研究は、プロトンポンプV-ATPaseの構造的多様性によるポンプとしての性質の違いと、各V-ATPaseが特定の場所に局在する機構の解析により、酸性環境を形成する原理の解明を目的としている。V-ATPaseはATPを加水分解する触媒部分とプロトンの輸送路からなり、触媒活性とプロトン輸送はサブユニット間の相対的な回転により共役している。したがって、多様なV-ATPaseのポンプとしての性質は、ATPの加水分解に依存した回転触媒機構を解析することにより比較できる。我々は、酵母V-ATPaseについて確立した酵素1分子の回転を観察する実験系を用い、回転時に生じるトルクは約36 pN nm であり、類似の構造を持つF-ATPaseより小さいことを明らかにした。回転を詳細に解析すると、1回転以下の戻りがしばしば観察された。回転中に、サブユニット間の相互作用が生じているものと考えられる。また、構造の多様性が回転に及ぼす影響を検討するため、酵母のサブユニットの一部をマウスのものに置換えたハイブリッドV-ATPaseを作成し、回転観察に必要な変異を導入した。 局在については、破骨細胞に特異的なV-ATPaseの形質膜への局在に注目している。これまでに、a3とd2イソフォームを持つV-ATPaseは破骨細胞のリソソームに特異的であり、分化に伴いリソソームが形質膜近傍へ移動し融合することでV-ATPaseが形質膜に局在することを示した。さらに、a3遺伝子欠損マウスを用いて、リソソームの形質膜への移動にはa3が必須であることを明らかにした。24年度は、a3遺伝子欠損マウスの破骨細胞ではアクチンの局在は正常であるが、チュブリンの形質膜近傍の局在が消失することを見出し、V-ATPaseの局在と細胞骨格との関係を明らかにした。今後は、リソソームの移動におけるチュブリンの役割の解明に着手する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題は、構造的に多様なV-ATPaseのポンプとしての性質の比較と、破骨細胞におけるV-ATPaseの形質膜への局在機構の解明に着目している。ポンプとしての性質を解析するための一分子回転観察系と、Eサブユニットのイソフォームを酵母のV-ATPaseに導入した酵素の調製は完了しており、これから解析に取りかかる段階にある。また、破骨細胞に特異的なV-ATPaseを持たないマウスの脾臓マクロファージから破骨細胞を分化させる実験系は既に確立できており、この系を用いてa3イソフォームやチュブリンなど形質膜への局在に関わる因子の候補を同定した。今後は、これらの因子がV-ATPaseの形質膜への局在にどうかかわるのか、その分子機構の解析に着手する。
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今後の研究の推進方策 |
本課題3年間のうち初年度が終わり、順調に準備が完了し成果が出始めた。 ただし、V-ATPaseの回転触媒機構を詳細に解析するには、一分子観察系の空間解像度を改善する必要があることがわかった。そこで、25年度はまず空間解像度の改善に着手し、その上で、構造的な多様性による回転機構の違いを解析する。 我々は、遺伝子改変マウスを用いて、V-ATPaseのa3イソフォームがリソソームの形質膜近傍への移動に重要な役割を果たすことを示した。a3と相互作用する因子などの検索により、リソソームの移動に関与する因子を同定し、分子機構の解明につなげる。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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