研究課題
糖タンパク質に付加された糖鎖は様々な生物活性を持つと考えられているが、特定の糖鎖構造との関係を示した研究は少ない。本申請課題は申請者らがN-結合型糖鎖の根元にα1,6 フコースを転移する糖転移酵素(Fut8)欠損マウスに見出した認知障害に焦点を当て、認知障害の機序を糖鎖による機能分子の質的変化の視点から明らかにする事を目標に行なった。平成25年度までに、Fut8を高発現していて古くから神経細胞分化モデルとして使われてきたPC12 細胞をもちいてFut8欠損細胞を作製し、アクチビン受容体を介するシグナル異常により神経突起形成に支障が生じることを明らかにした。さらに、海馬の電気生理学的解析を行ない、α1,6 フコース修飾がシナプス可塑性に重要な働きしている事を見出した。平成26年度は、シナプス後肥厚のAMPA型グルタミン酸受容体数の増加が可塑性に重要であると考えられていることから、AMPA受容体に注目して解析を行なった。Fut8 欠損にAMPA 受容体数の減少が予測されたが、意外にもサブユニット構成に関わらず複合体形成能が亢進し、受容体数が増加していることを見出した。これらの結果は、多様な構造をもつ糖鎖修飾を受ける糖タンパク質中でも、Fut8 の標的タンパク質の機能はα1,6 フコースの有無という単糖一つ分の僅かな違いにより制御されており、その乱れが記憶・学習の基礎過程である可塑性の減弱とシナプス後肥厚のAMPA 受容体数の増加という、相反すると思われる現象に関わっていることを示している。Fut8欠損マウスは 軽度の肺気腫様変化も認められる。脳・神経系特異的な機能解析を行うため、Fut8のfloxedマウスを作製し、CaMKIIプロモーターCre発現マウスと交配を行っているが、期待値を大きく下回る匹数の欠損マウスしか得られず、解析には至っていない。。
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J Biol Chem.
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