研究課題
本研究では、未だ不明な点が多いアレルギー性疾患の発症と概日リズムの関係について注目し、時計遺伝子によるアレルギー発症制御の分子機構を明らかにすることを目的としている 。これまで申請者らは時計遺伝子の一つ、NFIL3の各種免疫細胞の分化や機能発現における役割を、NFIL3欠損(KO)マウスを用いて明らかにしてきた。昨年度は、代表的なアレルギー疾患モデルであるマウスの気道炎症モデルを用い、NFIL3の発現が、気道炎症の発症と病態に大きく影響を与えることを明らかにした。肥満細胞は抗原に反応し、ヒスタミンなどのケミカルメディエーターを産生することによりその症状を悪化させるなど、アレルギー性疾患の病態において非常に重要な役割を持っている。本年度は、肥満細胞の発生分化と活性化におけるNFIL3の役割を解析した。NFIL3 KOマウスとWTマウスの骨髄由来肥満細胞(BMMC)について検討し、以下のことを明らかにした。1)KO BMMCにおいても、IL-3存在下でWTと同様、4週間程度で98%以上の細胞がc-kit陽性FceRI陽性となった。即ち、IL-3依存的BMMCの産生には、NFIL3の発現は必要ない。2)BMMCは抗原刺激によりIL-6とTNFaを産生するが、それらの産生量にはKOとWT BMMCの間で有意な差が見られなかった。即ち、TH2細胞とは異なり、NFIL3は肥満細胞においてこれら炎症性サイトカインの産生の制御には関わっていない可能性がある。3)WT BMMCにおけるNFIL3の発現は、非常に低く、PMA/Ionomycin刺激や抗原刺激により強く誘導される。このことは、上記2)の結果を説明する理由の一つである。従って健常時の細胞ではなく、感作させた細胞でNFIL3の誘導が見られる細胞におけるNFIL3の役割を解析する必要がある。
3: やや遅れている
NFIL3 KOをマウスを用いて、BMMCの分化と活性化におけるNFIL3の役割を明らかにした。しかしNFIL3の発現量が低く、抗原感作時における検討が必要になった。また肥満細胞欠損マウス(NFIL3 KO/KitW-sh/W-sh)を作成し、移入実験を予定していたが、現在のところ実験に供するための十分なコロニーを確保できていない。そのため移植実験は26年度以降に持ち越される。
26年度は、BMMCを慢性的に感作させたモデルを用いて、その活性化におけるNFIL3の機能解析を早めに終了させる。モデルマウスとしてNFIL3 KO/KitW-sh/W-shの作成を終了させ、in vivoの系を用いた、肥満細胞の活性化におけるNFIL3の機能解析を重点的に行う。
予定していたマウスモデルの樹立が完了していないため、マウス維持、購入費における支出が少なかった。また参加を予定していた学会への出張が見送られたため、旅費が未使用である。解析の中心となるフローサイトメトリーや培養に使用する抗体やサイトカイン、各種試薬や器具の購入、マウスの購入と維持費等、また国内外の学会発表、出席にかかる費用に使用する。
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