研究課題
基盤研究(C)
本研究では、DNA複製開始機構とゲノム安定性維持機構との連携の生理的重要性を提示することを目的とする。当該年度は、DNA複製開始に必須であり、ゲノム安定性維持にも重要な役割を持つことが予測されるRECQL4に焦点を絞り解析を進めた。発現制御可能なプロモーターの支配下にヒトRECQL4を発現させたRECQL4遺伝子破壊株を、ニワトリDT40細胞をもちいて樹立した。この細胞では、ヒトRECQL4の発現停止に伴い、細胞の増殖能が次第に低下したが、ヒトRECQL4のN末端側1-496アミノ酸領域の発現により増殖能の低下が解除された。そこで、この作用に必要となる最小限の領域を確定する目的から、DT40細胞RECQL4遺伝子破壊株にヒトRECQL4の1-126、126-196、196-350、350-496、1-196、126-350、196-496、1-350、126-496各断片を発現させた細胞をそれぞれ作製し、これらの細胞の増殖能について検討した。その結果、今回検討したものについてはいずれも増殖能低下を解除するには至らなかった。しかしながら、逆に1-196の断片で増殖能低下および致死性の顕著な増強が確認された。本研究で用いたRECQL4破壊株では、漸次的なRECQL4タンパク質の減少に伴って、残存するRECQL4の活性に依存した細胞の増殖能あるいは生存能が結果として現れていると考えられる。したがって、本研究での1-196の断片による顕著な増殖能の低下は、RECQL4の細胞増殖への寄与に対する競合的な阻害を表すものではないかと推測される。ほかにも、RECQL4の分解に対して影響を与えている可能性などいくつかの可能性が考えられるため、今後、RECQL4 1-196アミノ酸領域および、本研究で失われた196-496アミノ酸領域の両者が示す機能について検討をおこなう予定である。
3: やや遅れている
本研究は、試験管内での生化学的実験と培養細胞を用いた細胞生物学的実験を解析手段として、DNA複製開始に関わる機能と遺伝子構造安定性維持に係る機能との連携を解明していくことを目的とする。現在のところ、培養細胞(遺伝子破壊細胞)を用いたRECQL4の機能の解析を中心的に進めている。生化学的解析に関しては、検討をおこなうための準備となる実験を進めているところである。また、所属機関の移転による研究実施場所の変更に伴って、種々の基礎的な検討改めておこなっている。
DNA複製開始やゲノム安定性維持機構において機能する諸過程に関わるタンパク質との相互作用を想定しながら、RECQL4、CDC6、CDT1の機能を記述、理解することに重点を置く予定である。具体的には、RECQL4のN末端領域を中心として、部分領域の機能や翻訳後修飾の役割を、これまでの研究を発展させた細胞生物学的解析と各種組換えタンパク質を用いた生化学的解析の両面から検討する。同時に、Xenopus 卵抽出液を用いた無細胞実験系に応用できる新たな生化学的指標を探索し、本研究に応用することを目指す。
消耗品費としては実験用ガラス器具、実験用プラスチック器具、試薬類の購入をおこなう。試薬類には、細胞培養用の培地、血清を含む。また、抗体作製、核酸分析およびオリゴDNA作製委託にかかる費用にも研究費を使用する。卵抽出液を用いた生化学的検討のため、実験動物 (Xenopus laevis) の購入も計画する。さらに、成果発表のための論文作製・投稿、あるいは学会参加費用も計上する。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Biochem. Biophys. Res. Commun.
巻: 427 ページ: 682-686
10.1016/j.bbrc.2012.09.124
巻: 417 ページ: 1145-1150
10.1016/j.bbrc.2011.12.080