研究課題
本研究は、DNA複製開始機構とゲノム安定性維持機構との連携の生理的重要性を提起することを目的としておこなった。本研究計画の成果として、これまでにDNA複製開始とゲノム安定性維持に重要な役割を果たすRECQL4の遺伝子破壊株を、ニワトリDT40細胞を用いて樹立した。これにより、RECQL4 のN末端側が生存に必須であることを細胞レベルで再確認した。また、DNAの過剰な複製を抑止するスイッチの役割を果たすCDT1について、DNA複製を抑制的に制御することが研究代表者らにより見出されているため、この機能に関与する領域を特定することを目指した。その結果、N末側254アミノ酸とC末側153アミノ酸はDNA複製の抑制に必須の役割を果たしていないことが示唆された。本年度は、このCDT1によるDNA複製抑制作用についてより詳細な解析を進めることに的を絞り、利用する欠失変異体型CDT1の種類を増やすとともに、それらの添加によるDNA複製中の新生鎖伸長反応への影響について検討した。N末端側254アミノ酸を欠失した変異体を添加した場合には、野生型CDT1を添加した場合と同様に、新生DNA鎖伸長反応が抑制された。一方、C末端側を欠失した変異体を用いた場合には、部分的なDNA複製の抑制作用が認められるにもかかわらず、新生鎖伸長反応の抑制は観察されなかった。これらの結果より、C末側のDNA複製の抑制は、これまでに観察された抑制作用とは異なる効果によるものであることが示唆された。さらに、CDT1添加によるDNA複製関連タンパク質のクロマチン結合を観察したところ、新生鎖伸長反応においてCDT1がDNAヘリカーゼの機能に対し抑制的に作用している可能性が考えられた。CDT1はがん細胞でとりわけ強く発現していることから、CDT1ががん細胞に特有のゲノム不安定化に対し、多重複製の誘導だけでなく新生鎖伸長反応の抑制によっても影響を与えている可能性が、本研究により示唆された。
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Biochem. Biophys. Res. Commun.
巻: 452 ページ: 48-52
10.1016/j.bbrc.2014.08.043.