研究課題
高等動物体内にはD型アミノ酸を機能分子とするバイオシステムが存在することが、広く認められるようになってきた。特に、D-アスパラギン酸(D-Asp)は、神経内分泌・内分泌系においてホルモンの生成と分泌の調節に関与すると考えられている。D-Aspを取り巻く細胞内の分子的装置、例えば、細胞外放出や分解、細胞内取り込みなどに関する研究は進展しているが、その一方で、生合成に関しては未だにほとんど明らかになっていない。本研究課題で我々は、D-Asp合成酵素遺伝子の特定を目指して研究を続けている。平成26年度には、昨年度までの成果に基づき、研究を進展させた。すなわち昨年度は、D-Aspの合成能を有することを確認した細胞株(ラット由来1種類、ヒト由来1種類)を用いて、D-Asp含量と候補遺伝子の発現量との相関関係の解析を行った。その結果、アメリカのグループがD-Asp合成酵素として報告したクローンの発現量とD-Asp含量とには全く相関関係がなく、ラットとヒトでは、当該遺伝子はD-Aspの生合成には関与しないことが強く示唆された。そこで我々は、small interfering RNA(siRNA)により当該候補遺伝子の発現を抑制(knock down)したときに、D-Asp含量(生成)がどのように影響されるかを解析した。D-Aspの合成能を有することを確認したラット由来細胞株から、当該遺伝子のsiRNA(配列の異なる2種類)を恒常的に発現する安定発現株を複数株単離した。これらの培養にあたって、細胞内および培地中のD-AspとL-Aspを定量し、knock downの影響を解析した。その結果、単離した全ての細胞株でD-Aspの総量(細胞内と培地中の合計量)が変化しないことを明らかにした。むしろ、L-Asp総量に変化が認められた。すなわち、当該遺伝子は、用いたラット細胞株のD-Aspの合成には関与しないことが明らかとなった。
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