TRAIL(TNF-related apoptosis inducing ligand)に抵抗性を示し,TRAIL レセプターであるDR5(Death receptor 5)タンパク質を核内に持つヒト腫瘍細胞を用いて,ヒトインポーチンβ1(Imp β1)の機能を抑えた場合に,in vitroで見られた抗腫瘍効果がin vivoでも見られるかを調べた.薬剤誘導性にImp β1 shRNAを発現する,レンチウイルスベクタープラスミドDNAを元に作製した非増殖型レンチウイルスをHeLa細胞に感染させ,薬剤誘導性にImp β1がノックダウンされる細胞を得た.それらをクローニングし,ウェスタンブロットで顕著なImp β1ノックダウンが確認された2つのクローンとコントロールの細胞を,BALB/c RAG-2 (-/-)背部皮下にそれぞれ異種移植した.飲水に薬剤を添加した群と非投与群に分け,更に,ヒト抗DR5アゴニスティック抗体またはヒトIgGの腹腔内投与群の計4群に分けて,薬剤と各抗体をそれぞれ週2回投与しながら,生着した腫瘍の腫瘍径を経時的に計測した.また,生着した各群の腫瘍を回収し,薬剤誘導性にshRNAと共に発現する蛍光タンパク質の発現を確認した.同時に,各群の腫瘍細胞の細胞膜と細胞全体におけるDR5の発現レベルを比較・検討した. その結果,Imp β1ノックダウン細胞を移植したマウス4群のうち,薬剤投与群2群にshRNAが誘導された.更に,薬剤と抗DR5同時投与群のみ,有意に腫瘍の退縮及び消失を見た.この時,細胞膜でのDR5の発現の上昇が観察された. in vivoで腫瘍細胞のImp β1をノックダウンすることが,DR5の核から膜への移行を促してTRAIL/DR5依存性のアポトーシスを誘導し,腫瘍の退縮や拒絶が可能になったと考えられ,今後のがん治療への応用の可能性が期待される.
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