正常細胞には細胞死を誘導せず,腫瘍細胞に対してのみ細胞死を誘導するTRAILタンパク質は,そのレセプターの一つであるDR5タンパク質と腫瘍細胞膜で結合して死のシグナルを伝達する.TRAIL低感受性ヒト腫瘍細胞株では,DR5が膜より核内に多く局在していることから,薬剤の添加で,核内のDR5が細胞膜に移行するようにしたヒト腫瘍細胞を作製,マウスの皮下に生着させた.腫瘍塊が一定の大きさに達した時点で,局在変化を誘導する薬剤とDR5に対する刺激抗体を投与したところ,腫瘍の退縮または消失が見られた. 腫瘍細胞のDR5の局在を核から細胞膜に変化させる薬剤の開発が,今後のがん治療に繋がる可能性が示された.
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