研究課題/領域番号 |
24590094
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
板部 洋之 昭和大学, 薬学部, 教授 (30203079)
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研究分担者 |
加藤 里奈 昭和大学, 薬学部, 助教 (30392400)
小濱 孝士 昭和大学, 薬学部, 助教 (60395647)
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キーワード | 酸化LDL / 酸化リン脂質 / リゾホスファチジルコリン / 動脈硬化症 / LC-MS/MS / PAF-AH / 歯周病 / 歯肉溝滲出液 |
研究概要 |
① 酸化LDLは心血管疾患の発症要因であり、予後予測因子の可能性も期待されている。LDL酸化に伴う特徴的な脂質の変化を知るために、硫酸銅酸化したLDL中のリン脂質プロファイルを質量分析法で調べた。ヒトLDLを硫酸銅で酸化すると60分程度のラグタイムの後、急速にTBARS値の上昇、アガロース電気泳動度の増加が見られ、その後プラトーに達する。この時急速にPUFA含有PCが減少しlysoPCが増加した。PAF-AHを失活させたLDLでは、lysoPCの生成が著しく抑制された。蓄積が確かめられた主な酸化PC分子種、C34:2-PCやC36:2-PCのOH化体、あるいは9CHO-PCであり、いずれもリノール酸含有分子種に由来するものと考えられた。アラキドン酸、EPA、DHAを含有するPC分子種はほとんど消失していることから、これら二重結合の多い脂肪酸が酸化された場合には、さらに二次的な酸化産物にまで変換したり、あるいはPAF-AHで代謝されるなどで、迅速に失われるのではないかと考えられた。 ② ヒト血中酸化LDLの性状を知るため、HiTrapQカラムを用いて、LDLを分画した。吸着画分に酸化LDLが濃縮し、アガロースゲル電気泳動度の増加、抗酸化PC抗体反応性の上昇を確かめた。意外なことにリゾPC、酸化PCの蓄積は見られず、循環血中では、生成した酸化PCはlysoPCに代謝され、さらにリゾPCは容易に再アシル化、あるいは別のリポタンパク質や細胞膜に移動して、酸化LDL粒子上に蓄積し難いと考えられた。 ③ 歯肉溝滲出液中の酸化LDLについて調べるため、酸化LDLのELISA検出条件の改善した。予備検討から歯周病部位から採取した歯肉溝滲出液中に酸化LDLが多い可能性が指摘され、現在多数検体による検討と脂質プロファイル検討のための準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸化LDL中の脂質プロファイルの検討が進み、主な酸化リン脂質分子種がいくつか特定できた。この成果については、平成25年度末に論文発表した。さらに、ヒト血漿中に存在する酸化LDL中の脂質プロファイルの特徴についても、予備的検討が進んでおり、現在検証中である。当初の予想とはやや違った結果であるが、生体内での酸化LDLの挙動をより明確化できる可能性があり、さらにもう一歩解析を進め研究を展開したい。
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今後の研究の推進方策 |
① 血漿中の酸化LDLの脂質プロファイルが、硫酸銅処理で調製した酸化LDLと大きく異なっている可能性について、データの検証を行う。このことは、血漿中の酸化LDLの挙動の特徴を表している可能性があり、興味深い。lysoPCのリポタンパク粒子間の移動性についての検討から、脂質の代謝の速さについて明らかにすることも一つの展開である。また、破綻したプラークの成分を反映すると考えられる心筋梗塞患者急性期の血液サンプルを用いた脂質プロファイルの解析も併せて試み、病巣での酸化物の蓄積と循環血中での代謝とを対比できるかもしれない。 ② 歯肉溝滲出液中の酸化LDLに注目して、歯周病の進展と酸化LDLの関連性、さらに酸化PCプロファイルの特徴についても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
① 3月末の日本薬学会第134年会の出張旅費を支出するため、精算するのが次年度になってしまった。 ② 研究の進捗状況を考えると、次年度に分析するLDLサンプル、歯肉溝滲出液サンプルの分析回数が増えると予想され、それに必要なカラム等の購入費用を次年度に回して有効利用したかった。 ① 3月末出張旅費を精算。 ② LDLサンプル、歯肉溝滲出液サンプルの分析に用いるカラム等の購入費用に充当する。
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