研究課題
MAP1B, MAP2 による細胞骨格の制御は、遺伝子発現の量的変化のみならず、リン酸化の変化によっても、なされる。MAP2 はリン酸化により細胞骨格の主要な構成蛋白 beta -tubulinから離れ、beta-tubulinの脱重合を促進する。代表者は、MAP2のリン酸化が刻印付けの過程で亢進されることを見出した(山口ら、Neurosci. Res. 69, 32-40, (2011))。このことは、刻印付けに伴い、リン酸化されたMAP2が細胞骨格のダイナミクスを制御し、神経細胞の樹状突起などの構造変化に影響をおよぼしていることを示唆している。そこで、MAP2のリン酸化を阻害すると刻印付けの記憶形成過程に影響があるかどうか、MAP2のリン酸化酵素阻害剤(リチウムクロライド)をニワトリヒナに静脈注射、若しくは、大脳に直接注入し、記憶形成への影響を解析したところ、刻印付けの記憶形成が阻害された。このことは、細胞骨格タンパクが脱重合することが、刻印付けの記憶形成に重要であることを示している。細胞骨格が変化すると、NMDA受容体やAMPA受容体などのシナプス上での局在が変化し、神経伝達効率が変化することが知られている。そこで、刻印付けによって、NMDA受容体やAMPA受容体がシナプス上に集積するかどうか、シナプス画分を生化学的に分画し、これら受容体の集積を検討した。その結果、シナプス分画にAMPA受容体が集積することが分かった。刻印付けの形成過程では、AMPA受容体がシナプス膜状に集積し、神経伝達効率を高めることが重要であると考えられた。
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