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2012 年度 実施状況報告書

新規脂質メディエーター受容体の生理的及び病態生理的役割の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24590097
研究種目

基盤研究(C)

研究機関帝京大学

研究代表者

杉浦 隆之  帝京大学, 薬学部, 教授 (40130009)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードGPR55 / リゾホスファチジルイノシトール
研究概要

Gタンパク質共役型受容体の1つであるGPR55は、リゾホスファチジルイノシトール(LPI)に対する特異的な受容体である。今回の研究では、まず、GPR55の各種臓器・細胞における発現を詳しく検討した。また、各種培養細胞、動物由来細胞に及ぼすLPIの影響を詳しく調べた。さらに、細胞を各種刺激剤で刺激したときのLPI産生についても調べた。その結果、脾臓、胸腺、リンパ節、小腸、精巣等に強く発現していること、K562細胞やKHYG-1細胞などの培養白血病細胞に多量に発現していることなどを明らかにした。免疫系の組織や白血病細胞に多く発現していることから、白血球系の細胞における分布を詳しく調べたところ、Tリンパ球、Bリンパ球、マクロファージ等に強く発現していることが分かった。一方、好中球については発現はほとんど見られなかった。Tリンパ球やBリンパ球における発現レベルは、細胞の分化に伴って上昇することから、GPR55は成熟したTリンパ球やBリンパ球の増殖や機能発現に深く関わっている可能性がある。興味深いことに、培養リンパ系白血病細胞にLPiを加えると細胞の増殖が促進された。次に、マウスの臓器におけるLPIの分布と産生を調べた。まず、LC-MS/MSを用いてLPIを分離・定量する系を確立した。この系を用いてマウスの臓器におけるLPIの量を調べた結果、脾臓や脳に比較的多量のLPiが含まれていることを見いだした。また、単離した脾細胞をConAなどで刺激したところ、LPIの産生が速やかに起きることを明らかにした。LPIとその受容体であるGPR55は、免疫系の調節において重要な役割を演じている可能性が高い。一方、GPR119を発現しているHEK293細胞を用いて、内在性リガンドの探索を行い、2-モノアシルグリセロールやN-アシルエタノールアミンにアゴニストとしての活性があることを確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

リゾホスファチジルイノシトール(LPI)とその受容体であるGPR55については、研究は順調に進行しており、これまでに得られた結果から、リンパ球やマクロファージなどの免疫系の細胞の機能や増殖の制御・調節において重要な役割を演じている可能性が示された。GPR119についても研究は順調に進行しており、、2-モノアシルグリセロールやN-アシルエタノールアミンにアゴニストとしての活性があることを確認したほか、アンタゴニストを1つ見いだしている。GPR35についても、GPR55と平行して研究を進めており、GPR55の場合と類似した結果が得られつつある。これらのことから、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。

今後の研究の推進方策

これまでの研究により、リゾホスファチジルイノシトール(LPI)とその受容体であるGPR55が、リンパ球やマクロファージなどの免疫系の細胞の機能や増殖において重要な役割を演じていることが示唆されたので、今年度の研究では、Tリンパ球やBリンパ球をサブセットに分け、どのサブセットにGPR55が多く発現しているのかを明らかにし、また、LPIの作用を詳細に調べることにより、免疫系におけるGPR55とLPIの具体的な役割が何であるかを明確にしたいと考えている。また、LPIの定量法をさらに改善して、どのような細胞がどのような刺激を受けたときにLPIが産生されるのか、疾病との関連などについても検討を進める予定である。特に、アレルギーや生活習慣病との関連性については、鋭意、追求したいと考えている。GPR35やGPR119についても、GPR55の場合と平行して研究を進めGPR119に関しては内在性リガンドの確定を行いたいと考えている。

次年度の研究費の使用計画

1)免疫細胞におけるGPR55の発現: FACSを用いて、Tリンパ球やBリンパ球をサブセットに分け、どのサブセットにGPR55が多く発現しているのかを明らかにする。また、他の免疫関連細胞についても、GPR55の発現を詳細に調べる。
2)免疫細胞に及ぼすLPIの影響:各種リンパ球やマクロファージに及ぼすLPIの作用を詳細に調べることにより、免疫系におけるGPR55とLPIの役割を明確にする。
3)LPIの定量: LPIの定量法をさらに改善して微量の試料でも分析できるようにし、どのような細胞がどのような刺激を受けたときに、どれくらいのLPIが産生されるのかを明らかにする。
4)疾病との関連: アレルギーや生活習慣病とGPR55やLPIの関連性については、ノックアウトマウスや疾患モデルマウス等を用いて、鋭意、追求したいと考えている。
5)GPR119: GPR119を発現させたHEK293細胞を用いて、内在性リガンドの決定を行う。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] The cannabinoid receptor-2 is involved in allergic inflammation.2012

    • 著者名/発表者名
      Mimura T, Ueda Y, Watanabe Y, Sugiura T.
    • 雑誌名

      Life Sci.

      巻: 90 ページ: 862-866

    • DOI

      10.1016/j.lfs.2012.04.005.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Involvement of the endogenous cannabinoid 2 ligand 2-arachidonyl glycerol in allergic inflammation.2012

    • 著者名/発表者名
      Mimura T, Oka S, Koshimoto H, Ueda Y, Watanabe Y, Sugiura T.
    • 雑誌名

      Int Arch Allergy Immunol.

      巻: 159 ページ: 149-156

    • DOI

      10.1159/000336167.

    • 査読あり
  • [学会発表] Gタンパク質共役型受容体GPR55の内在性リガンド・リゾホスファチジルイノシトール(LPI)のLC-MS/MSによる定量2013

    • 著者名/発表者名
      岡 沙織、谷川 尚、山下 純、杉浦隆之
    • 学会等名
      日本薬学会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      20130328-20130330
  • [学会発表] Gタンパク質共役型受容体GPR55の免疫系における発現分布2013

    • 著者名/発表者名
      谷川 尚、岡 沙織、山下 純、杉浦隆之
    • 学会等名
      日本薬学会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      20130328-20130330
  • [学会発表] アシルグリセロリン酸アルトランスフェラーゼ8(GPAT8)の逆反応と基質特異性2013

    • 著者名/発表者名
      山下 純、古賀裕基、鈴木尚孝、林 康広、佐々木洋子、岡 沙織、谷川 尚、杉浦隆之
    • 学会等名
      日本薬学会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      20130328-20130330
  • [学会発表] アシルグリセロリン酸アルトランスフェラーゼ8(GPAT8)の基質特異性とトランスアシレーション反応2012

    • 著者名/発表者名
      山下 純、古賀裕基、鈴木尚孝、林 康広、佐々木洋子、岡 沙織、谷川 尚、杉浦隆之
    • 学会等名
      日本脂質生化学会
    • 発表場所
      九州大学医学部百年講堂
    • 年月日
      20120607-20120608

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公開日: 2014-07-24  

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