研究課題/領域番号 |
24590097
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
杉浦 隆之 帝京大学, 薬学部, 教授 (40130009)
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キーワード | GPR55 / リゾホスファチジルイノシトール / リゾリン脂質 |
研究概要 |
Gタンパク質共役型受容体の1つであるGPR55は、リゾホスファチジルイノシトール (LPI) に対する特異的な受容体である。今回の研究では、まずGPR55の各種臓器及び組織における発現を調べた。脾臓、リンパ節などの免疫系組織、小腸、大腸などの消化器系組織、精巣等で高い発現が観察された。一方、脂肪組織、胃、肝臓等では発現はほとんど見られなかった。GPR55が発現している消化器系組織である小腸について詳しく調べた結果、GPR55はリンパ球で発現が高いことを明らかにした。また、GPR55が免疫系の組織に発現していることから、白血球系の細胞における分布を調べた結果、 Tリンパ球やBリンパ球、そして樹状細胞等にGPR55の発現が認められた。一方、好中球については発現がほとんど見られなかった。また、Tリンパ球やBリンパ球は分化段階を経てGPR55の発現が増加していることが明らかとなった。培養リンパ系白血病細胞にLPIを作用させると、細胞増殖が促進された。マウスに免疫応答を誘導させると、脾臓におけるGPR55の発現は増加していた。次に、GPR55の内在性リガンドであるLPIの産生について調べた。マウス脾細胞をマイトジェンで刺激すると、LPIが産生されてくることがわかった。これらの結果から、LPIとその受容体であるGPR55は、免疫応答時などの増殖や機能調節において重要な役割を担っている可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの結果から、GPR55とその内在性リガンドであるリゾホスファチジルイノシトール(LPI)が、免疫細胞であるリンパ球の増殖などの機能調節に関わっている可能性が示された。GPR35についても、GPR55の研究と同時に進行しており、GPR55の研究と類似の結果を得られつつある。これらのことから、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、GPR55は免疫系の組織や消化器系の組織に発現しており、特に免疫系の細胞ではTリンパ球やBリンパ球、樹状細胞に発現している。GPR55が免疫系細胞の増殖等の機能調節で重要な役割を担っている可能性が示唆されたので、今年度の研究では、免疫応答時にGPR55の上昇が確認されたことから、免疫応答時にどの細胞のサブセットが発現上昇しているのか明らかにする。そのときの組織内でのLPIの産生がGPR55の上昇との関連性をLPIの定量法をさらに改善し検討したい。GPR35やGPR119についても、GPR55と平行して行い、GPCRと疾病との関連などについて検討する予定である。
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