研究課題
GPR55は、ヒトでは319個のアミノ酸からなるGタンパク質共役型受容体である。我々は、ヒトGPR55を発現させたHEK293細胞を用いて、GPR55がリゾリン脂質の一種であるリゾホスファチジルイノシトール(LPI)に対する特異的な受容体であることを報告してきた。また、GPR55を発現させたHEK293細胞にLPIを作用させると、ERKのリン酸化が速やかに起こることや、細胞内カルシウムの一過的上昇が速やかに引き起こされることなどを報告してきた。しかし、GPR55の機能等に関してはまだ不明な点が多い。今回の研究では、各種組織におけるGPR55の発現やLPIの役割について調べた。マウスの各種臓器及び組織におけるGPR55 mRNAの発現について調べた結果、消化器系組織である小腸及び大腸、免疫系の臓器である脾臓及びリンパ節などで高い発現が見られた。次に、脾臓について詳しく調べた結果、特にB細胞及びT細胞のリンパ球において高い発現が観察された。小腸においては、十二指腸、空腸、回腸すべてにおいてGPR55mRNAの発現が確認され、粘膜層及び筋肉層においてGPR55mRNAの発現が見られた。上皮細胞におけるGPR55mRNAの発現は低く、リンパ球での発現は高かった。脾臓においてB細胞でのGPR55の発現が高かったことから、B細胞におけるLPIとGPR55の役割について調べた。GPR55を発現しているIM-9細胞株を用いて、LPIの抗体分泌に及ぼす影響について調べた結果、LPIをIM-9細胞に作用させると、抗体分泌が濃度依存的に促進された。LPIのような抗体分泌の促進効果は、LPI以外のリゾリン脂質には認められなかった。GPR55は免疫組織や消化器系組織に発現しており、中でもリンパ球における発現が高いことから、抗体分泌などの免疫応答の調節に関わっている可能性がある。
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