研究課題
ナイーブT細胞が抗原と出会うとクローン増殖とエフェクターT細胞への分化が起こる。病原体を排除した後、ほとんどのT細胞は死滅し、一部のT細胞はメモリー細胞として長く体内で維持される。このメモリーT細胞は再び同じ病原体に感染した際には素早く反応し、外敵の排除に働く。ワクチンの目的の1つはメモリーT細胞を体内に作り出すことにあるが、どのような因子がメモリーT細胞へのコミットメントに必要であるのかは未だによくわかってはいない。どのようなシグナルがメモリーT細胞の形成に働いているかを理解することは今後のワクチン開発にとって大変重要である。平成25年度はNotchシグナルがメモリーT細胞の形成にどのような役割を持っているのかを検討した。Notchシグナルの下流で働く転写因子であるRBP-Jを欠損したT細胞はfollicular helper T (Tfh)細胞に分化した後、メモリー細胞として維持されなかった。Tfh細胞がメモリー細胞に変化する際にはCXCR5の発現の低下とCCR7の発現の上昇を伴って、T細胞領域とB細胞領域の境界付近に移動し、長期に維持されることがわかったが、RBP-J欠損Tfh細胞はCCR7の発現上昇が起こらず、T-B境界領域への移行も起こらなかった。これらの結果から、NotchシグナルはメモリーT細胞への分化に必須のシグナルであることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
Tfh細胞がメモリーT細胞になる際にどのようなシグナルが必要であるのか、そしてどこでメモリーT細胞が維持されているのかを明らかにすることができた。この成果は将来のワクチン開発にとって重要な知見となり得る。
Notch signalがどのような遺伝子の転写を介してメモリーT細胞への分化を調節しているのかを明らかにするために、野生型とRBP-J欠損T細胞の間で遺伝子発現の網羅的な解析を行う。また、Notch/RBP-Jのターゲット遺伝子を特定するためにChIP sequenceを行う。遺伝子発現解析の結果と照らしあわせて、候補遺伝子を特定する。その結果洗い出されたターゲット遺伝子の欠損マウスを作製し、想定されるメカニズムが正しいかを検証する。
次世代シークエンサーを用いた遺伝子発現の網羅的な解析を予定していたが、前年度に達成できなかったために、そのための試薬、解析のための費用が使用されずに残った。野生型とRBP-J欠損T細胞の間で次世代シークエンサーによる遺伝子発現の網羅的な解析 (RNA sequence)、Notch/RBP-Jのターゲット遺伝子を特定するためのChIP sequenceを遂行するために使用する。また、ターゲット遺伝子の欠損マウスを作製するためにも使用していく。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)
Immunol Invest.
巻: 43 ページ: 278-291
10.3109/08820139.2013.875039