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2012 年度 実施状況報告書

抗がん剤処理によるカルレティキュリンの細胞表面への移行とその生理的意義

研究課題

研究課題/領域番号 24590099
研究種目

基盤研究(C)

研究機関東邦大学

研究代表者

東 祐太郎  東邦大学, 薬学部, 准教授 (80231918)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードアポトーシス / カルレティキュリン / 抗がん剤 / 貪食
研究概要

本年度はcalreticulin(CRT)が細胞表面へ移行する機構を明らかにするため、mitoxantrone(MIT)処理によるCRTの細胞表面発現量の変化とcaspaseおよび小胞体ストレスとの関係について検討した。ヒト大腸がん細胞株 HT29 細胞をMITで 0~48 時間処理し、CRT の細胞表面発現量をフローサイトメトリーで解析したところ、細胞表面CRTは処理後4 時間(前期)と48 時間(後期)で2 相性の増加が認められた。そこでcaspase3 阻害剤を添加しcaspase3の関与について解析した結果、前期のCRT増加に影響はなかったが、後期のCRT増加は抑制された。またPhosphatidylserine(PS)の露出を解析すると前期には認められず、後期ではCRTの増加を認めた細胞で同様にPSの増加を認めたことから、 後期のCRT増加には caspase3を介したアポトーシス、前期のCRT増加には アポトーシス実行機構とは別の経路による反応であることが示唆された。CRTが小胞体内タンパクであり、抗がん剤の中には小胞体ストレスを誘発すものがあることから、前期のCRT増加に対して小胞体ストレスに関与するcaspase12阻害剤、活性酸素種 (ROS)阻害剤N-Acetyl cystein(NAC)、calpainの阻害剤(PD150606)、さらにcaspase8阻害剤を添加しその影響を解析したところ、いずれもCRT増加の抑制が示された。この時前期の細胞内caspase3、caspase8活性に対する各阻害剤の影響を解析したところ、各阻害剤ともcaspase8の活性化に対する阻害作用が認められた。以上のことから、前期における細胞表面CRTの増加は、小胞体ストレスによるcaspase8の活性化を介したものであることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、抗がん剤処理された腫瘍細胞におけるCRTの細胞表面への移行メカニズムと細胞表面における存在様式を解析し、腫瘍細胞の貪食除去における細胞表面CRTの役割を明らかにすることを目的としている。そのため初年度には小胞体内のCRTが抗がん剤により誘発されたアポトーシスの初期に細胞膜へ移行するメカニズムについて小胞体ストレスを中心に解析し、その経路について検討することを計画していた。今回の結果から小胞体ストレスとcaspase8を介したメカニズムが明らかになり、いまだ不十分な点もあるが目的は順調に達成されつつあると思われる。

今後の研究の推進方策

初年度の研究で、抗がん剤による細胞内CRTの細胞表面への移行メカニズムがある程度明らかになったことから、現在これまでの内容で投稿する準備をすすめている。またこの小胞体ストレスを介したメカニズムを細胞レベルで確証する。そのため実験材料として赤色蛍光タンパク質DsRed標識CRTを遺伝子導入により細胞内で作成し、共焦点レーザー顕微鏡を用いた解析に使用することを試みる。遺伝子導入細胞はHT29細胞を中心に検討するが、導入や観察が困難な場合は、抗がん剤でのCRT発現増加をすでに確認している子宮頸がん細胞株Hela細胞など他の細胞についても検討する。また同時にCRTを蛍光標識抗体で染色する実験系により局在変化について検討し、DsRed標識CRTの導入に時間がかかった場合に予備的なデータの収集に努める。さらに細部にわたって検討する場合には、CRTをDsRed標識または蛍光標識抗体で染色するとともに小胞体に特異な蛍光標識剤と組み合わせてその存在位置について解析する。
一方これまでの報告から、CRTは細胞表面でTSP -1やαvβ3インテグリンと共に結合することで認識され、マクロファージや樹状細胞による貪食とその抗原提示を介した免疫系の活性化につながる可能性が考えられた。そこで蛍光波長の異なった別の蛍光色素で標識された抗体によりTSP-1、αvβ3インテグリンを染色し、CRTとの結合や共局在について解析する。得られた結果から抗がん剤処理早期に小胞体から移行するCRTの細胞表面における存在様式について検討し、貪食への関与と役割について考察する。

次年度の研究費の使用計画

初年度は、予備実験に使用する予定であった試薬を既存のもので賄うことができたため、未使用額が発生した。本年度は年度当初から24年度の未使用分とあわせて研究費を使用し、細胞培養に用いる培養液、培養器材のほか、遺伝子導入に必要な試薬、標的タンパクの抗体など消耗品の購入にあてる。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Unlike natural killer (NK) p30, natural cytotoxicity receptor NKp44 binds to multimeric α2,3-NeuNAc-containing N-glycans.2013

    • 著者名/発表者名
      Ito K, Higai K, Shinoda C, Sakurai M, Yanai K, Azuma Y, Matsumoto K.
    • 雑誌名

      Biol Pharm Bull.

      巻: 35 ページ: 594-600

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Transcriptional regulation of Fucosyltransferase 1 gene expression in colon cancer cells.2013

    • 著者名/発表者名
      Taniuchi F, Higai K, Tanaka T, Azuma Y, Matsumoto K
    • 雑誌名

      Scientific World Journal.

      巻: 2013 ページ: 105464, 9 pages

    • DOI

      10.1155/2013/105464

    • 査読あり
  • [学会発表] Killer Lectin-like Receptors(KLRs)およびNatural cytotoxicity triggering receptorsの糖鎖リガンド特異性

    • 著者名/発表者名
      伊藤 健一郎, 桧貝 孝慈, 東 祐太郎, 松本 宏治郎
    • 学会等名
      第85回 日本生化学会
    • 発表場所
      福岡国際会議場(福岡県)
  • [学会発表] Naturalcytotoxicityreceptors(NCRs)の糖鎖リガンド特異性

    • 著者名/発表者名
      伊藤健一郎,高橋真美子,桧貝孝慈,東祐太郎,吉田直弘,松本宏治郎
    • 学会等名
      日本薬学会第133年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県)
  • [学会発表] 抗がん剤による小胞体ストレスとcaspaseの活性化を介したcalreticulinの細胞表面における増加

    • 著者名/発表者名
      東祐太郎,鈴木賢一,桧貝孝慈,松本宏治郎
    • 学会等名
      日本薬学会第133年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県)
  • [学会発表] KillerLectin-likeReceptors(KLRs)の糖鎖リガンド特異性

    • 著者名/発表者名
      今泉雄三,小松由佳,桧貝孝慈,東祐太郎,松本宏治郎
    • 学会等名
      日本薬学会第133年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県)
  • [学会発表] 大腸癌細胞におけるFUTI遺伝子の転写調節

    • 著者名/発表者名
      桧貝孝慈,谷内富美子,田中智美,東祐太郎,松本宏治郎
    • 学会等名
      日本薬学会第133年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県)

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公開日: 2014-07-24  

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