研究課題/領域番号 |
24590101
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
長浜 正巳 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (60281169)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | リボソーム生合成 / AAA ATPase / RNA代謝 |
研究概要 |
真核細胞リボソームの生合成では、前駆体RNAを中心に多数のリボソームタンパク質と生合成補助因子が会合および脱会合を行い、リボソーム前駆粒子が段階的に成熟する。この過程で、AAAファミリーに属するシャペロン様ATPaseであるNVL2がRNAヘリカーゼDOB1と相互作用し、リボソーム前駆粒子のエネルギー依存的構造変換に寄与すると考えられる。本研究では、NVL2が作用する複合体の構成因子および機能を解明し、リボソーム生合成における分子シャペロンの役割を解き明かすことを目的とする。 平成24年度では、NVL2との相互作用が予想されたヒトTRAMP複合体の同定と機能解析を行った。酵母TRAMP複合体はポリAポリメラーゼTrf4/5、RNA結合タンパク質Air1/2、およびRNAヘリカーゼMtr4 (Dob1)から構成され、基質RNAの3’末端をポリアデニル化してエキソソームによる分解へと導く。高等真核細胞では、Mtr4 (Dob1)に対応する分子としてヒトDOB1 (MTR4)の存在が示されたが、他のサブユニットの存在は明かされていなかった。そこで、データベースサーチにおいてTrf4/5およびAir1/2と微弱な相同性を示したヒトタンパク質ZCCHC7およびPAPD5について、それらの性質を調べた。その結果ZCCHC7およびPAPD5は、DOB1, エキソソーム, およびNVL2との相互作用を示したことから、ヒトにおけるTRAMP様複合体サブユニットとして働くと考えられた。またsiRNAによるノックダウン実験の結果、ヒトTRAMP様複合体の形成には、核エキソソームの触媒サブユニットPM/Scl-100 (RRP6)との相互作用が重要であることが示された。これは、酵母のTRAMP複合体では見られない特徴であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究においてすでにNVL2との相互作用が示されたDOB1 (MTR4)は、酵母においてTrf4/5およびAir1/2とともにTRAMP複合体を構成することが知られている。このことから、高等真核細胞においてもDOB1が類似の複合体を構成し、分子シャペロンであるNVL2はDOB1を介しこの複合体と相互作用し、その機能を制御することが予想された。平成24年度の研究では、この予想が正しい可能性を実験的に示すことができ、当初の計画は順調に進行していると判断された。
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今後の研究の推進方策 |
リボソーム生合成過程においてNVL2が作用する複合体には、DOB1を含むTRAMP様複合体以外にも複数の存在が予想される。したがってそれらの解明は、NVL2の機能解析における重要な課題であると考えられる。この問題に取り組むため、ドミナントネガティブ変異型NVL2の発現によりリボソーム前駆粒子の成熟に欠損が生じた細胞を用い、前駆粒子の構成成分を正常細胞と比較するためのプロテオーム解析を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度研究費のうち、約16万円の物品費が未使用のまま残された。これは、研究が平成25年度以降も継続的に進行する過程において、消耗物品の購入時期が年度をまたいでずれてしまったことから生じたものである。この残額は、平成25年度分に請求した研究費の一部と合わせ、平成25年4月の物品購入費に充てる予定である。
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