研究課題
平成25年度の研究計画に基づいて,以下の研究を実施した。まず,Mnk1変異体を発現させたMnk-DKO MEF細胞を増殖因子やストレスで刺激した際のmTORシグナル系およびMnkシグナル系について,eIF4G(Ser1108残基)のリン酸化やeIF4E(Ser209)のリン酸化を検出するリン酸化特異抗体を用いて解析した。その結果、Mnk1を強制発現させたMnK-DKO細胞を血清で刺激すると,Mnk1-Ser209のリン酸化に伴ってeIF4G-Ser1108のリン酸化レベルが急速に低下する現象を見出した。しかしこれは,プロテインSet/Thrホスファターゼの活性化ではなく,Mnk1あるいは下流のプロテインキナーゼによってSer1105あるいはSer1106残基がリン酸化されることで抗pSer1108抗体による認識が阻害された結果である可能性が示唆された。一方,ヒトSprouty2 (Spry2)はDrosophila Spryのホモログであり,増殖因子受容体チロシンキナーゼ情報伝達系の負の制御分子として重要な機能を担っている。最近,Spry2の機能がMnk1/2によって制御されることが報告されたことから,Mnk1/2が直接にSpry2をリン酸化する可能性について検討した。HA-Spry2発現ベクターをMnk1と共にHEK293T細胞に導入し,HA-Spry2のSDS-PAGE上における移動度シフトによってリン酸化解析を行なった結果,Mnk1の活性化に伴って細胞内でSpry2がリン酸化される事が示唆された。Spry2のリン酸化部位と予想されるSer112およびSer121のAla変異Spry2ではリン酸化レベルの低下が認められたが,変異Spry2でもシフトバンドが残存することから,S112/S212以外にもMnk1のリン酸化部位が存在することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
『研究実績の概要』で記したように,当初の計画はおおむね順調に進展した。しかし,S112/S212以外にもMnk1のリン酸化部位が存在することが示唆され,他のリン酸化部位の探索を進める必要が出てきたため,以降の解析についてはH25年度中に進めることが出来なかった。
『研究実績の概要』で記した成果を踏まえ,それらを更に発展させた研究をH26年度の計画に沿って以下の2点を中心に実施していく予定である。(1) eIF4GのSer1105あるいはSer1106残基のリン酸化によってリン酸化Ser1108抗体による認識が阻害されている可能性について,Ser1105/1106がMnk1あるいは他のプロテインキナーゼによってリン酸化される可能性について解析を進める。(2) Spry2のS112/S212以外のリン酸化部位の同定を行なうと共に,Mnk1によるSpry2リン酸化の生理的意義についての検討を進める。
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