研究課題/領域番号 |
24590107
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
北村 紀子 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 研究員 (80415603)
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研究分担者 |
神沼 修 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 主任研究員 (80342921)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | NFAT / CN / 新規免疫抑制薬 |
研究概要 |
NFATは5つのファミリー(NFATc1-c4, NFAT5)から構成される様々な免疫制御分子発現に必須の転写因子であり、その機能はカルシニューリン(CN)によって制御されている。CN阻害剤はNFATをターゲットとした免疫抑制薬として頻用される一方で重篤な副作用をも誘因するが、これはNFATの発現組織やNFATファミリー間の機能の多様性によると考えられる。そこで、各NFATの選択的制御法の開発を目的として、NFATファミリーにおける会合分子との結合様式の相違について検討を行った。 各NFATの部分タンパクを大腸菌で作製しプルダウンアッセイにてCNとの結合親和性を調べたところ、既に報告されている2カ所のNFAT-CN結合領域の間に新たな結合領域を認め、NFATc2での結合活性は他のNFATファミリーに比較して弱かった。この領域において最も強い結合が認められたNFATc1の配列ペプチドを用いて結合領域の絞り込みを行ったところ、核移行シグナル近傍の16アミノ酸が重要であることが明らかになった。また、WWTR1によるNFATc4転写制御機構について解析したところ、WWTR1の会合候補転写因子TBX5はT細胞に比べて血管平滑筋細胞で高発現であったもののNFATc4のプロモーター活性に対するWWTR1とTBX5の協調作用は認められず、NFATc4遺伝子プロモーターにおいては、WWTR1はTBX5と異なる転写因子と協調してNFATc4転写を制御する可能性が示唆された。さらに、NFATc4特異的siRNA発現レンチウィルスを感染させた血管平滑筋細胞の遺伝子発現変化をマイクロアレイで解析したところ、NFATc4が発現調節する数十の候補遺伝子を抽出した。これらの結果より、NFATファミリーにおける選択性を規定する機序の一端が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究実施計画での検討課題と結果は以下のようである。 ・NFATファミリー間でのCN結合領域や親和性についての比較検討:各NFATとCNとの結合実験から、NFATc2以外で親和性が認められた新たなNFAT-CN結合領域について、配列ペプチドを用いたプルダウンアッセイにより16アミノ酸を同定できた。 ・WWTR1によるNFATc4転写制御領域の解析:WWTR1はTBX5と協調してNPP1遺伝子発現を増強する。TBX5の発現はT細胞に比べ血管平滑筋細胞で高いことを確認した。しかしながらNPP1と異なり、NFATc4プロモーター活性に対してWWTR1とTBX5の協調作用は認められなかった。NFATc4遺伝子プロモーターにおいて、WWTR1はTBX5と異なる転写因子と協調作用を示す可能性が示唆された。 ・NFATc4による発現調製遺伝子の探索:NFATc4特異的siRNAを発現するレンチウィルスベクターを作製し、そのウィルスを血管平滑筋細胞に感染させて遺伝子導入した後、導入細胞における遺伝子発現の変化をマイクロアレイで解析したところ、NFATc4が発現調節する数十の候補遺伝子を抽出した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に得られた結果から各NFATの選択的制御法をより具体的に模索することを目標とし、NFAT配列ペプチドによるCN-NFAT結合の選択制御効果や免疫抑制作用をin vitroおよびin vivoで検討するほか、WWTR1を利用したNFATc4の選択的発現制御の可能性を検討する。 ・NFATファミリー間でCNとの結合親和性に選択性が認められた新たな結合領域について、結合に関与するコアペプチドを決定し、NFATとCNとの結合様式について構造を明らかにする。またこのコアペプチドのアミノ酸に変異を加えたペプチドを用いることで、より効果的にNFAT-CN結合を阻害するペプチドの探索を行う。 ・タグを付与した標的NFAT分子および阻害ペプチドの発現ベクターを同時にT細胞に遺伝子導入し、CNとの結合活性に与える影響を免疫沈降法・クロマチン免疫沈降法などにより解析する。また、阻害ペプチドをT細胞へ導入することで、内在性のNFATによるT細胞機能への影響を検討する。 ・各NFAT遺伝子およびタンパク発現に果たすWWTR1と各種転写因子の役割を調べるため、強制発現ベクターおよびSiRNA発現ベクターをレンチウィルスで遺伝子導入して検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
未使用分の研究費は、実験を進めていく過程で必要となった試薬の購入額には不足であったため、次年度以降の研究費と合わせて使用する予定である。 使用する研究費は研究推進計画に準じ、タンパク精製やプルダウンアッセイに用いる抗体ビーズ、各種ペプチドやカラム類、サイトカインの検出やリアルタイムPCR用の試薬、細胞培養に用いる試薬、実験に必要なプラスチック製品などの消耗品のほか、実験用動物の購入に充てる予定である。
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