NFATはサイトカインをはじめとする免疫制御分子発現に必須の転写因子である。NFATの5つのサブタイプの機能や発現組織の多様性は免疫抑制薬での重篤な副作用の要因となることから、サブタイプ間の選択的制御を規定するメカニズムを探索した。 前年度までにNFATと、その機能制御分子カルシニューリン(CN)との間にサブタイプ間でアフィニティの異なる新たな結合領域を見いだし、結合に関わるコアペプチドを同定した。より強力なNFATサブタイプ制御には立体的な分子間相互作用を確認することが重要であると考えられることから、結晶構造解析に用いるための純度の高いNFATおよびCNリコンビナントタンパクの発現・精製条件の検討を行った。まず、低温度条件にて大腸菌で発現させたリコンビナントタンパクにプロタミンを添加してDNA結合タンパクを除き、その後、ゲルろ過によって単体のタンパクを分取した。しかし、この新たな結合領域のNFATタンパクは塩基性アミノ酸が多く、電荷の偏りにより水溶性が乏しいために大量精製が困難であることが分かった。そこで、電荷・水溶性を改善した58アミノ酸からなるNFAT配列ペプチドの構築・合成を行ってCNと反応させたところ、単体でのNFAT/CN結合をゲルろ過および免疫沈降法にて確認することができた。また、NFAT発現制御に関わる転写制御因子を探索するため、NFATプロモーター領域をGFPに結合したレポーターベクターを作製し、293FT細胞に恒常的に遺伝子導入した細胞株を樹立した。そこに転写因子siRNAライブラリーを導入して検討することにより、NFAT阻害分子の発現調節を制御する転写因子候補を新たに複数同定することができた。さらに、NFATファミリーにおける進化論的な解析を行い、その分化における誘導機構と生物学的意義について考察した。
|