研究課題/領域番号 |
24590109
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研究機関 | 富山県薬事研究所 |
研究代表者 |
小笠原 勝 富山県薬事研究所, その他部局等, 研究員 (30443427)
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キーワード | ベツリン / 腫瘍 |
研究概要 |
昨年度、ポリ(I:C)刺激により亢進した脾細胞NK活性に対するTGF-βあるいはPGE2の抑制作用を、ベツリンがどのようにして解除しているのかについて検討し、その作用機序の一部が、ベツリンによるポリ(I:C)の作用の増強であることを明らかにした。そこで本年度、ポリ(I:C)の作用に対するベツリンの増強メカニズムを明らかにするため、どのような細胞及びサイトカインが関与するのかについて検討を行った。その結果、脾臓細胞から樹状細胞あるいはB細胞を除去すると、ベツリンの増強効果は著しく低下したことから、ベツリンの増強効果には樹状細胞及びB細胞が極めて重要であることが分かった。一方、T細胞を除去しても、部分的な低下しか認められなかったことから、T細胞の関与は比較的少ないと考えられた。また、ベツリンの増強効果は、骨髄由来樹状細胞(DC)、B細胞及びNK細胞の3者あるいはDCまたはB細胞とNK細胞の2者の共培養においても認められた。一方、NK細胞にポリ(I:C)を添加してもNK活性の亢進及びベツリンの増強作用は認められなかった。これらのことから、ベツリンは樹状細胞あるいはB細胞に作用していると考えられた。ベツリンの増強効果に関与するサイトカインについて中和抗体を用いて検討したところ、IL-2、IL-18、及びIFN-βの関与が認められた。そこで、これらサイトカインの産生に対するベツリンの影響を検討したところ、ベツリンはIL-18及びIFN-βの産生をやや増加させることが分かった。また、ベツリンが、IL-2、IL-18、あるいはIFN-β刺激による脾細胞NK活性亢進を増強することを明らかにした。これらのことから、ベツリンは、ポリ(I:C)刺激によるIL-18及びIFN-β産生を増加させると共に、これらサイトカインのNK活性亢進作用を強めることでポリ(I:C)の作用を増強すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の検討結果から、25年度は新たに設定した作業仮説「ベツリンは、ポリ(I:C)の作用を増強することで、異なるシグナル伝達系を介するTGF-βとPGE2の2つの免疫抑制作用を解除している」に基づき研究を遂行した。その結果、ベツリンの標的細胞が樹状細胞あるいはB細胞であること、及びベツリンの作用に関与するサイトカインを明らかにしたことより、当初の研究実施計画の検討内容をおおむね達成したため。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は当初の計画では、「ベツリンとがん治療薬の併用によるがん治療効果の増強作用に関する検討」を実施することとしていた。とくに、①ベツリンのがん治療効果を評価するためのがん移植モデルの構築、②ベツリンのがん治療効果における免疫系の関与、③前年度までに明らかにしたベツリンの薬効に関与する生理活性分子に着目した解析、を行うことを計画していた。これらの内、③については着目すべき生理活性分子を特定する必要があったが、これまでの検討から、ベツリンの作用に関与するサイトカインを明らかにすることができたので、上記①~③の実験はいずれも実施可能となった。平成26年度は当初の計画通りに研究を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は請求した助成金に加えて、平成24年度からの繰り越し金として62,180円があったため 平成26年度は実験動物の購入に多額の費用がかかることが予想されるため、平成25年度予算のうち平成26年度に繰り越した17,596円と平成26年度分として請求した助成金を合わせて平成26年度の研究計画の遂行に充てるものとする
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