本年度は、ベツリンがマウス個体レベルにおいて抗腫瘍効果を示すのか、また、その作用機序に免疫抑制に対する解除効果が関与しているのかを明らかにするため、TGF-βによる免疫抑制を誘導することが報告されているB16F10悪性黒色腫細胞の皮下移植マウスモデルを用いて、ベツリンの抗腫瘍効果を検討した。その結果、ベツリン150nmolを腫瘍内に2日目から16日目まで連日投与したところ、17日目において約40%の抗腫瘍効果が認められた。比較としてTGF-β受容体キナーゼ阻害剤45nmolを同様に投与したところ、17日目において約50%の抑制効果が得られた。また、ポリ(I:C)と抗がん剤の2者併用による抑制効果とベツリンを加えた3者併用による抑制効果を比較検討したところ、ベツリンを加えた3者併用ではより強い抑制効果が認められた。そこで、ベツリンの抗腫瘍効果に免疫細胞が関与しているかを明らかにするため、ベツリン投与の翌日に腫瘍組織に集積した白血球をフローサイトメトリーにより解析したところ、対照群に比較してNK細胞が約5倍に増加していることが分かった。さらに、活性化NK細胞(CD69陽性)についても、ベツリンの投与により有意に増加することが分かった。これらのことから、ベツリンの抗腫瘍効果には、TGF-βにより抑制されたNK細胞活性に対する解除効果が寄与している可能性が示唆された。
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