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2012 年度 実施状況報告書

土壌微生物「細胞性粘菌」由来の薬理活性物質DIFの研究

研究課題

研究課題/領域番号 24590110
研究種目

基盤研究(C)

研究機関群馬大学

研究代表者

久保原 禅  群馬大学, 生体調節研究所, 准教授 (00221937)

研究分担者 小島 至  群馬大学, 生体調節研究所, 教授 (60143492)
大島 吉輝  東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (00111302)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード細胞性粘菌 / DIF / がん / 糖尿病 / 免疫 / トリパノソーマ
研究概要

細胞性粘菌Dictyostelium discoideum(以後「粘菌」)は、単純な生活環を有する土壌微生物で、発生過程の最後に胞子と柄からなる子実体を形成する。DIF-1は、粘菌の柄細胞分化誘導因子として同定された物質だが、我々はDIF-1とその誘導体が複数の薬理活性を有することを発見し、DIFをリード化合物とした抗がん剤、糖尿病治療薬などの開発を進めている。平成24年度の本研究において、以下を実施した。
1.がん細胞におけるDIFの作用機序については、断片的な解析が行われてきたが、DIFの細胞内での挙動は不明であった。そこで、我々は、蛍光発色体BODIPYを結合したDIF誘導体「BODIPY-DIF-3」を合成し、その生物活性と細胞内局在を解析した。その結果、BODIPY-DIF-3は、他のDIF誘導体と同様にHeLa細胞の増殖を強力に阻害すること、また、ミトコンドリアに局在し、ミトコンドリア機能を阻害すること等を見出した。
2.マウス骨肉腫細胞LM8は、リゾフォスファチヂン酸(LPA)に対する遊走能を有しているため、ボイデンチャンバーなどを利用してin vitro遊走(浸潤・転移)実験が可能である。この系を利用して、LPAによるLM8細胞の遊走を阻害するDIF誘導体のスクリーニングを行った結果、いくつかのDIF誘導体がLM8細胞の遊走を強力に阻害することを見出した。
3.Trypanosoma cruziは、南米シャーガス病を引き起こす寄生性原虫である。我々は、簡便なin vitro培養系を利用して、T. cruziのホストへの感染とホスト内での増殖に対するDIF誘導体の効果を検討した。その結果、いくつかのDIF誘導体がそれらT. cruzi活性を強力に阻害することを見出した。さらに、ある種のDIF誘導体がマウス血液中のT. cruzi数を有意に減少させることも見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

この1年間で、DIF誘導体の有するいくつかの薬理作用について、予定通りの解析を行うことができた。即ち、いくつかの有望なDIF誘導体を提示すること、並びに、それらの作用機序解析も進めることができた。

今後の研究の推進方策

今後も以下を継続する。
1.各種DIF誘導体は、複数の薬理活性(抗腫瘍活性、糖代謝促進活性、免疫制御活性、抗トリパノソーマ活性など)を有するが、側鎖修飾によって、それぞれの薬理活性を相当程度に分離できる。そこで、それぞれの薬理作用について、in vitro細胞培養系を利用して、DIFの作用機序の解析を進める。
2.これまでの成果を参考に、より有効なDIF誘導体をデザイン・合成し、in vitroでの薬効を検討する。
3.各種モデル動物を用いて、DIF誘導体の薬効と毒性を検討する。

次年度の研究費の使用計画

該当なし

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Derivatives of Dictyostelium discoideum differentiation-inducing factor-3 suppress the activities of Trypanosoma cruzi in vitro and in vivo2013

    • 著者名/発表者名
      Nakajima-Shimada J, Hatabu T, Hosoi Y, Onizuka Y, Kikuchi H, Oshima Y, & Kubohara Y
    • 雑誌名

      Biochemical Pharmacology

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Manganese promotes phorbol ester–induced interleukin-2 production via AP-1 activation in Jurkat T-cells2012

    • 著者名/発表者名
      Tanaka S, Masuda Y, Honma C, Hosaka K, Takahashi K, & Kubohara Y
    • 雑誌名

      Toxicology Letters

      巻: 211 ページ: 312-318

    • DOI

      10.1016/j.toxlet.2012.04.015

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Isolation, Synthesis and Biological Activity of Biphenyl and m-Terphenyl-Type Compounds from Dictyostelium Cellular Slime Molds2012

    • 著者名/発表者名
      Kikuchi H, Matsuo Y, Katou Y, Kubohara Y, & Oshima Y
    • 雑誌名

      Tetrahedron

      巻: 68 ページ: 8884-8889

    • DOI

      10.1016/j.tet.2012.08.041

    • 査読あり
  • [学会発表] HeLa細胞におけるDIF蛍光体の局在と機能

    • 著者名/発表者名
      久保原禅、菊地晴久、松尾祐介、大島吉輝、本間好
    • 学会等名
      日本細胞性粘菌学会第2回例会
    • 発表場所
      東京大学
    • 招待講演
  • [学会発表] 細胞性粘菌由来の薬理活性物質によるインターロイキン-2(IL-2)発現制御

    • 著者名/発表者名
      高橋克典,村上正巳,菊池晴久,大島吉輝,久保原禅
    • 学会等名
      第59回日本臨床検査医学学術集会
    • 発表場所
      京都国際会館
    • 招待講演
  • [図書] 細胞性粘菌(研究の新展開)~モデル生物、創薬資源、バイオ~2012

    • 著者名/発表者名
      阿部知顕、前田靖男(編著)、久保原禅 他(著)
    • 総ページ数
      552
    • 出版者
      アイピーシー社
  • [備考] 群馬大学生体調節研究所遺伝子情報分野

    • URL

      http://www.imcr.gunma-u.ac.jp/lab/molgen/

  • [産業財産権] ジクチオピロン誘導体又はジヒドロジクチオピロン誘導体を有効成分とするオステオポンチン産生阻害剤2013

    • 発明者名
      菊地晴久、大島吉輝、服部俊夫、久保原禅、他
    • 権利者名
      群馬大学、東北大学、扶桑薬品工業株式会社
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2013-046197
    • 出願年月日
      2013-03-08

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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