研究課題
基盤研究(C)
(1) 大脳皮質形成における新規Gタンパク質制御機構の機能解析大脳皮質形成におけるRic-8の機能を解析するために、内在性Ric-8AおよびRic-8BをノックダウンするためのshRNA発現アデノウィルスベクターの作製を行った。これを用いてマウス培養神経前駆細胞に対するRic-8AおよびBの機能解析を行った。神経前駆細胞の増殖に対する効果を検討したところ、Ric-8AおよびRic-8Bともにノックダウンすることにより、増殖能が減弱した。また、ボイデンチャンバー法を用いて細胞遊走能に対する効果を調べたところ、Ric-8Aのノックダウンは効果がなかったが、Ric-8Bのノックダウンにより神経前駆細胞の遊走能が減少した。われわれはGsシグナルが細胞遊走促進に働くこと、Ric-8BがGsシグナルを増強することを既に報告しているが、この結果から神経前駆細胞においてRic8BがGsシグナルによる細胞遊走促進活性に寄与していることが考えられた。(2) オーファンGPCRに対する機能抗体の作製ヒトGPR56に対するモノクローナル抗体を作製し、機能抗体としてのスクリーニングを、細胞内Ca濃度上昇、U87グリオーマ遊走能を指標に行った。その結果、3種類のアゴニスト様抗体を得ることができた。また、これら機能抗体による効果は、Gq特異的阻害剤であるYM684790により阻害されたことから、Gqを介したシグナルが示唆された。一方、大脳皮質において発現しているGPR49(LGR5)およびlatrophilinに対する機能抗体を作製するために、Sf9/バキュロウィルスの発現系を用いて、細胞外ドメインのリコンビナントタンパク質の調製を試みた。しかしながら、抗原として用いるまでの収量および精製度に至っておらず、条件を検討している。
3: やや遅れている
神経前駆細胞における新規Gタンパク質調節因子Ric8の機能に関しては、ノックダウンさせることにより内在性の機能、特に増殖、細胞遊走に対する効果を見いだすことができた。またノックダウンさせるためのアデノウィルスを用いて脳切片培養系での詳細な細胞動態の検討を行いつつある。オーファンGPCRに対する機能抗体作製に関しては、ヒトGPR56に対する機能抗体を3種類得ることに成功した。これらの抗体を用いて、抗体認識部位の同定を行っているところである。しかしながら、予定していた脳に発現するオーファンGPCRであるGPR49およびlatrophilinに対する機能抗体の作製にあたり、抗原として用いるための細胞外ドメインのリコンビナントタンパク質をSf9/バキュロウィルス発現系を用いて作製を行ったが、収量および精製が進行しておらず、抗体作製までに至っていない状況である。
神経前駆細胞おけるRic-8の機能解析においては、増殖および細胞遊走におけるGタンパク質やリガンドおよびそのGPCRとの関係を明らかにし、機構について解明を進める。さらにそれぞれの下流シグナルを探る。GPR56に対する機能抗体に関しては、得られた抗体を用いて抗体の結合部位を同定し、結合部位の変異体を作製することにより、活性化機構解析およびアゴニスト様抗体の結合部位をターゲットとした内在性リガンド探索を行う。GPR49およびLatrophilinなどオーファンGPCRに対する機能抗体の作製に関しては、細胞外ドメインをさらにドメインごとに分断することで、抗原として用いることができるだけの収量と精製度を目指す。
該当なし
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Leukemia.
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1038/leu.2013.75.
J. Biol. Chem.
巻: 287 ページ: 12691-12702
10.1074/jbc.M111.316307.
http://bsw3.naist.jp/itoh/