研究実績の概要 |
ヒトGPR56に対するモノクローナル抗体を作製し、U87グリオーマの細胞遊走を抑制する機能抗体として17CC, 4C3, 11E9の3種類、機能は示さないがGPR56の細胞外領域を認識する非機能性抗体が数種類得られた。GPR56に対する機能抗体によるU87グリオーマの細胞遊走抑制活性は、Gq特異的阻害剤YM-254890により阻害されることから、Gqを介したシグナル伝達系が細胞遊走抑制活性に関与することが示唆された。また、機能抗体は細胞内Ca2+濃度を増加させ、この効果はYM-254890により阻害された。さらに機能抗体による遊走抑制活性は、Rhoキナーゼの阻害剤Y27632により抑制されたことから、GPR56シグナルは、Gq-Rhoシグナル系を介して細胞遊走を抑制していることが考えられた。この成果は、26年度日本細胞生物学会で口頭発表し、また論文として報告した。 また、GPR49に対する機能抗体の作製は、Sf9/バキュロウィルス発現系を用いて作製を行ったが、収量および精製が進行しなかったため、大腸菌発現系を用いて行った。その結果、免疫に必要な量の抗原タンパク質を得ることに成功し、GPR49細胞外領域に対するモノクローナル抗体の作製を行った。一方、GPR49は筋芽細胞であるC2C12において発現が確認されたため、C2C12の増殖あるいは分化において機能していると考え、分化に伴うGPR49の発現変化を調べた。その結果、分化に伴いGPR49の発現量が増加することがわかった。さらに、GPR49の過剰発現による分化の促進、shRNAを用いたノックダウンによる分化の抑制がみられたことから、GPR49が筋芽細胞の分化に関与することが示唆された。C2C12細胞の分化に対するGPR49の機能は、GPR49に対する機能抗体をスクリーニングする手段として有効であり、今後、大脳皮質形成過程におけるGPR49の機能を調べる上でも役立つことが期待される。
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