研究課題/領域番号 |
24590116
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
副田 二三夫 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 助教 (10336216)
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キーワード | 排尿障害 |
研究概要 |
平成24年度の研究成果より、頻尿モデルのひとつである老化促進モデルマウス(SAMP8)の排尿活動に対して、5週間のエンリッチ環境飼育はマウスの休息期、非麻薬性中枢性鎮咳薬クロペラスチンは活動期にそれぞれ感受性を示し、排尿機能の異常を改善すること、さらに、排尿機能に対する5週間のエンリッチ効果の少なくとも一部に、中枢性の機序が関与する可能性が考えられた。そこで、平成25年度はまず、新たに購入したSAMP8に平成24年度と同様の処置を5週間行い、4群のSAMP8を作成した。具体的には、A)エンリッチケージでの飼育、B)通常の飼育ケージでの飼育、C)クロペラスチンの慢性皮下投与、D)生理食塩水の慢性皮下投与、である。これらのマウスから、脳および膀胱を摘出し、現在-80℃で保存中である。これらの組織サンプルは、平成26年度より網羅的解析などに用いる予定である。上述したように、エンリッチ環境飼育は、SAMP8の休息期における排尿障害を選択的に改善した。このことから、エンリッチ環境飼育は、いわゆる夜間頻尿の根本治療薬を開発するための有力な研究ツールとなり得る可能性があり、さらに夜間頻尿以外の排尿障害モデルにも有用である可能性を秘めている。そこで、平成25年度は、臨床現場でしばしば問題となる、脳血管障害に伴う排尿障害に着目し、エンリッチ環境飼育は、この排尿障害に対しても改善作用を示すのか否かについて予備的検討を行った。その結果、脳血管障害モデル群は、偽手術群に比べ、1回排尿量、1回排尿時間、最大尿流率が低下すること、この低下に対し、エンリッチ環境飼育は改善作用を示すことがわかった。以上のことから、エンリッチ環境飼育は、頻尿のような排尿機能の過活動モデルに加え、排尿困難のような排尿機能が低下したモデルに対しても有効であることが示唆され、排尿障害治療薬の研究ツールとして、エンリッチ環境飼育は有用である可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度まで、教員3人体制で所属研究室の業務(研究教育活動・伝票入力や報告書作成などの諸業務)を分担して行ってきたが、平成25年度の4月から8月までの5か月間は、研究室の教員は私1人となり(当時の所属研究室の学生は16人であり、それぞれの学生に、私とは別の研究テーマが与えられていた)、研究室運営に追われた。さらに平成24年度末に急遽、平成25年度4月からの講義の担当を依頼され、平成24年度に担当していた学生実習と講義(兼業)に加え、平成25年度は依頼された上記の講義を数回行い、研究活動がほとんどできない時期が生じてしまった。さらに、育児などの家事、平成25年度9月から3月までの研究室の移動・統合、物品整理などの諸業務も重なり、研究活動に時間を費やすことは、極めて厳しい状況であった。これらが、やや遅れている理由である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度サンプリングを行った、脳および膀胱組織を用いて、エンリッチ環境、鎮咳薬、それぞれの排尿機能改善作用に関与する分子を同定し、高齢者の夜間頻尿に対する根本治療薬を開発するための標的分子の同定を目指す。当初の研究実施計画では、プロテオミクスの手法を用いて頻尿改善作用に関与する分子を同定する予定であった。しかし、より信頼性の高いデータを効率良く得ることが重要であると考え、平成26年度は、まず、マイクロアレイ解析で、頻尿改善群で変動するmRNAをスクリーニング的に探索解析を行い、その結果、得られた候補分子を定量的リアルタイムRT-PCR法を用いて定量的に解析し、確実に変動する分子を明らかにする予定である。また、変動分子に特異的な抗体が存在する場合は、ウエスタンブロット法を用いて蛋白質レベルにおいても同様に変動するのか否かについて解析を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在までの達成度がやや遅れている理由でも記載したように、平成25年度は、諸般の事情により、研究活動に時間を費やすことが極めて厳しい状況であったため。 研究で使用する試薬や動物などの物品費、研究発表の際の旅費、機器のレンタル料、研究成果投稿料として使用する予定である。
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