研究課題/領域番号 |
24590116
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
副田 二三夫 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 助教 (10336216)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 排尿障害 / エンリッチ環境 / パッドテスト / シストメトリー / 頻尿 / 排尿困難 / 尿失禁 / 脈拍数 |
研究実績の概要 |
前年度までの研究において、4-5週間のエンリッチ環境飼育は、頻尿および排尿困難をともに改善させることを明らかにした。そこで今年度は、排尿機能に対するエンリッチ環境飼育の効果に着目し、8週齢のC57BL/6Jマウスを用いて5週間以上のエンリッチ環境飼育を行い、排尿機能に対する種々の基礎検討を行った。その結果、1.無麻酔・無拘束下における排尿活動に対するエンリッチ効果は、飼育期間を72週間まで延長しても持続して認められた。2.パッドテストの結果、失禁状態であることを示唆する直径が0.2cm未満の小さいスポット尿の数は、72週間飼育したスタンダード群に比べ、エンリッチ群で有意に減少した。3.麻酔下シングルシストメトリーの結果、40週間および72週間の環境飼育は、スタンダード群に比べ、エンリッチ群で排尿量および尿流率が有意に増加し、残尿量は有意に低下した。4.覚醒下における脈拍数は、38週間飼育したスタンダード群に比べ、エンリッチ群で有意に低下した。これらの結果から、マウスの排尿機能に対するエンリッチ効果は、5週間以上の長期においても認められ、失禁状態を改善させる可能性が考えられる。さらに、中枢機能が低下した麻酔下の知見から、排尿機能に対するエンリッチ効果は、飼育期間を延長させることで、中枢のみならず末梢性の機序が関与すること、その作用の一部に副交感神経系などの自律神経系が関与している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の予定より、網羅的解析の研究進捗が遅れてしまったため。
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今後の研究の推進方策 |
まず、網羅的解析の結果を踏まえ、老化促進モデルマウスの頻尿症状を改善させる分子を定量解析により同定する。さらに、平成26年度に実施した、排尿機能に対するエンリッチ環境飼育の作用に関する基礎検討も継続して実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に、マイクロアレイ解析を行い、頻尿改善群で変動するmRNAを探索し、その結果、得られた候補分子をリアルタイムRT-PCR法などを用いて定量解析し、確実に変動する分子を同定する予定であった。しかし、マイクロアレイの受託解析の結果が当初の予定より時間を要したため、平成26年度は、エンリッチ環境飼育を5週間以上行い、排尿機能に対する種々の基礎検討を行うこととしたため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の理由のため、平成27年度はリアルタイムRT-PCR法などの定量解析や排尿機能に対するエンリッチ環境飼育の作用に関する基礎検討に必要な経費、学会発表や論文投稿に要する費用に充てる予定である。
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