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2013 年度 実施状況報告書

ストレス性内臓知覚過敏における温度感受性受容体の役割:病態動物とヒトの標本の解析

研究課題

研究課題/領域番号 24590118
研究機関城西国際大学

研究代表者

堀江 俊治  城西国際大学, 薬学部, 教授 (50209285)

キーワードTRPV1 / TRPA1 / TRPM2 / 潰瘍性大腸炎 / クローン病 / 知覚過敏性 / 遠位結腸 / 求心性一次知覚神経
研究概要

本年度は、炎症性腸疾患モデルマウスの消化管における温度感受性TRPチャネルおよびセロトニン受容体の局在と知覚過敏性のメカニズムについて検討した。これらの研究成果の要点を以下の3点にまとめた。
1.潰瘍性大腸炎モデルマウスにおいて、脊髄由来外来性知覚神経のセロトニン5-HT3受容体の増大は炎症進行と深く関与していることが示唆された。病態時ではセロトニン5-HT3受容体陽性神経から放出されたサブスタンスPが大腸粘膜に存在する炎症性細胞上のNK1受容体に作用し、炎症反応を促進するメカニズムが関与する可能性がある。また、セロトニン5-HT3受容体拮抗薬は病態時に発現増大する5-HT3受容体を遮断して、抗炎症作用を現わすことが示唆された。
2.潰瘍性大腸炎とクローン病の腸疾患モデルマウスを作成した。これらの病態モデルにおいて、バロスタット法で検討したところ、結腸内圧による痛みに対して痛覚過敏性が惹起されていた。そこで、免疫組織化学的に解析した結果、粘膜層においてのみTRPV1チャネル神経線維数の増加と非神経性TRPV1免疫陽性細胞の発現を観察した。現在、これら受容体の変化が知覚過敏性に関連しているものと考えている。
3.ラット脊髄後根神経節の免疫染色により、直腸から脊髄へ投射する外来性知覚神経において温度感受性TRPM2チャネルの発現が明らかになった。内臓痛の検討では、非選択的TRPチャネル阻害薬の処置、あるいはTRPM2KOを用いた検討により、クローン病病態モデルマウスにおける内臓痛閾値が低下し、炎症性内臓痛覚過敏が抑制された。これらの結果より、炎症性腸疾患ではTRPM2チャネル発現神経の増加が痛覚過敏性に関与していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初計画では、平成25年度は、ストレス・炎症時における温度感受性TRPチャネルの発現局在・発現量の変化の検討、およびTRPV1・TRPA1を介する生理反応の変化の検討であった。各項目について達成度を評価した。
1.炎症性腸疾患モデル動物、機能性ディスペプシアモデルの作製はほぼ成功し、実験に供している。その炎症性腸疾患モデル動物を用いて、温度感受性受容体TRPV1, TRPM2の発現局在と発現量の変化を検討し結果を出した。
2.炎症性腸疾患モデル動物、機能性ディスペプシアモデル動物における消化管機能の検討を行った。炎症性腸疾患モデル動物に関しては痛覚過敏が観察され、ヒトの病態とよく相関していた。この症状のメカニズムに関して温度感受性TRPチャネル発現神経と内臓痛に関与するセロトニン5-HT3受容体との関連性も検討でき、セロトニン5-HT3受容体拮抗薬の炎症性腸疾患への応用を示唆する成果を挙げることができた。
3.TRPA1に関する検討は正常動物に関する知見を得たが、病態モデルにおける検討は実施することができず、今後の課題となっている。
4.機能性ディスペプシアモデル動物に関しては胃運動減弱が観察され、これもヒトの病態とよく相関していた。
以上の理由から、おおむね順調に進んでいると判定した。

今後の研究の推進方策

1.消化管痛覚過敏性が惹起された炎症性腸疾患モデルマウスの結腸において、粘膜層においてのみTRPV1神経線維数の増加と非神経性TRPV1免疫陽性細胞の発現を観察した。これら受容体の変化が知覚過敏性に関連しているものと考えている。今後は、病態モデルマウスから得られたTRPM2発現細胞について、免疫染色やフローサイトメーターを用いてどんな免疫細胞かを解析する。
2.炎症性腸疾患モデル動物、機能性ディスペプシアモデル動物における温度感受性TRPチャネル発現の増大に関して検討を行っている。これらの病態モデルにおける知覚過敏・痛覚過敏と温度感受性TRPチャネル発現の増大の関連性について検討を進める。
3.健常人の大腸組織標本においてはTRPM2が主に上皮細胞に発現し、粘膜固有層に一部発現していることが明らかとなった。粘膜上皮のTRPM2は5-HTを多く含有する腸クロム親和性細胞に発現しているのではないかと考えられる。この結果により、TRPM2の活性化によって腸クロム親和性細胞から放出されるセロトニンが消化管運動異常、下痢、嘔吐などの消化管機能異常に関与することが考えられるため、これら症状に関連する因子とTRPM2の共発現を解析する。
4.機能性胃腸障害や炎症性腸疾患では消化管に異常な知覚過敏性が引き起こされる。上記の検討結果を考え合わせると、機能性胃腸障害や炎症性腸疾患における温度感受性受容体局在変化の意義を推察できると考えている。

次年度の研究費の使用計画

研究初年度購入予定であったレーザ―ドップラー血流測定器のプローブを、大学の共通機器経費で購入していただいたため、次年度繰越金が発生している。
本研究の過程で、温度感受性受容体が発現している免疫細胞を特定するフローサイトメーター(大学所有)での解析を実施する必要が出てきた。この次年度使用額を使って、フローサイトメーターに必要な試薬・抗体を購入する。

  • 研究成果

    (17件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 3件)

  • [雑誌論文] TRPM8 has a key role in experimental colitis-induced visceral hyperalgesia in mice2014

    • 著者名/発表者名
      Hosoya T, Matsumoto K, Tashima K, Nakamura H, Fujino H, Murayama T, Horie S
    • 雑誌名

      Neurogastroenterol Motil

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • DOI

      10.1111/nmo.12368

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Activation and inhibition of thermosensitive TRP channels by voacangine, an alkaloid present in Voacanga africana, an African tree2014

    • 著者名/発表者名
      Terada Y, Horie S, Takayama H, Uchida K, Tominaga M, Watanabe T
    • 雑誌名

      J Nat Prod

      巻: 77 ページ: 285-297

    • DOI

      10.1021/np400885u

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Orally Active Opioid μ/δ Dual Agonist MGM-16, a Derivative of the Indole Alkaloid Mitragynine, Exhibits Potent Antiallodynic Effect on Neuropathic Pain in Mice2014

    • 著者名/発表者名
      Matsumoto K, Narita M, Muramatsu N, Nakayama T, Misawa K, Kitajima M, Tashima K, Devi LA, Suzuki T, Takayama H, Horie S
    • 雑誌名

      J Pharmacol Exp Ther

      巻: 348 ページ: 383-392

    • DOI

      10.1124/jpet.113.208108

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Bee venom phospholipase A2-induced phasic contractions in mouse rectum: Independent roles of eicosanoid and gap junction proteins and their loss in experimental colitis2013

    • 著者名/発表者名
      Nomura R, Yanagihara M, Sato H, Matsumoto K, Tashima K, Horie S, Chen S, Fujino H, Ueno K, Murayama T
    • 雑誌名

      Eur J Pharmacol

      巻: 718 ページ: 314-322

    • DOI

      10.1016/j.ejphar.2013.08.015

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Mechanisms that underlie μ-opioid receptor agonist-induced constipation; differential involvement of μ-opioid receptor sites and responsible regions2013

    • 著者名/発表者名
      Mori T, Shibasaki Y, Matsumoto K, Shibasaki M, Hasegawa M, Masukawa D, Yoshizawa K, Horie S, Suzuki T
    • 雑誌名

      J Pharmacol Exp Ther

      巻: 347 ページ: 91-99

    • DOI

      10.1124/jpet.113.204313

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Neuronal Nitric Oxide Synthase-Derived Nitric Oxide Is Involved in Gastric Mucosal Hyperemic Response to Capsaicin in Rats2013

    • 著者名/発表者名
      Raimura M, Tashima K, Matsumoto K, Tobe S, Chino A, Namiki T, Terasawa K, Horie
    • 雑誌名

      Pharmacology

      巻: 92 ページ: 60-70

    • DOI

      10.1159/000351853

    • 査読あり
  • [学会発表] 胃粘膜上皮バリア機能調節における温度感受性TRP チャネルの役割2014

    • 著者名/発表者名
      堀江俊治
    • 学会等名
      日本薬学会第134年会
    • 発表場所
      熊本 鶴屋百貨店
    • 年月日
      20140328-20140330
    • 招待講演
  • [学会発表] ワサビ辛味成分アリルイソチオシアネートは胃運動を減弱させる:胃運動低下病態モデルマウスの作製2013

    • 著者名/発表者名
      田嶋公人、松本健次郎、堀江俊治
    • 学会等名
      第41回日本潰瘍学会
    • 発表場所
      ホテル阪急エキスポパーク
    • 年月日
      20131206-20131207
  • [学会発表] マウス下部消化管摘出標本におけるアリルイソチオシアネートのワサビ受容体TRPA1を介する平滑筋収縮作用―セロトニン5-HT3および5-HT4受容体の関与―2013

    • 著者名/発表者名
      田嶋公人、松本健次郎、堀江俊治
    • 学会等名
      第41回日本潰瘍学会
    • 発表場所
      ホテル阪急エキスポパーク
    • 年月日
      20131206-20131207
  • [学会発表] TRPM2チャネルのラット腸管神経系、脊髄後根神経節における局在と内臓痛への関与2013

    • 著者名/発表者名
      松本健次郎, 渡辺智章, 五十幡陽, 高木加奈子, 田嶋公人, 堀江俊治
    • 学会等名
      第15回日本神経消化器病学会
    • 発表場所
      島根 ビッグハート出雲
    • 年月日
      20131107-20131108
  • [学会発表] ワサビ辛味成分アリルイソチオシアネートによるラット胃粘膜炎症の惹起-機能性ディスペプシア病態モデル動物の開発に向けて-2013

    • 著者名/発表者名
      12. 田嶋公人、高野翔太、竹内徹也、大曽根健矢、松本健次郎、堀江俊治
    • 学会等名
      第7回機能性ディスペプシア研究会
    • 発表場所
      島根 ビッグハート出雲
    • 年月日
      20131107-20131108
  • [学会発表] 基礎研究によって天然薬物由来成分に薬理作用があると言うためには? 古典薬理学的および化学的アプローチ2013

    • 著者名/発表者名
      堀江俊治
    • 学会等名
      天然薬物研究方法論アカデミー第16回シンポジウム
    • 発表場所
      岐阜グランドホテル
    • 年月日
      20130824-20130825
    • 招待講演
  • [学会発表] ラット腸管神経系、脊髄後根神経節におけるTRPM2チャネルの局在に関する免疫組織化学的検討2013

    • 著者名/発表者名
      松本健次郎, 渡辺智章, 五十幡陽, 高木加奈子, 田嶋公人, 堀江俊治
    • 学会等名
      TRP研究会2013
    • 発表場所
      岡崎 生理学研究所
    • 年月日
      20130613-20130614
  • [学会発表] 5-Fluorouracil induces diarrhea, nausea, and vomiting with alteration of aquaporins, serotonin, and neurokinin receptors in mouse intestine2013

    • 著者名/発表者名
      Kenjiro Matsumoto, Jo Odagiri, Kimihito Tashima, Syunji Horie
    • 学会等名
      Digestive Disease Week 2013
    • 発表場所
      Orland, USA
    • 年月日
      20130518-20130521
  • [学会発表] 3種類の内臓痛覚過敏モデルラットにおける桂枝可芍薬湯の作用2013

    • 著者名/発表者名
      松本健次郎、山村朋子、鈴木梨香子、田嶋公人、堀江俊治
    • 学会等名
      第86回日本薬理学会年会 (福岡, 2013.3.21-23
    • 発表場所
      福岡国際会議場
    • 年月日
      20130321-20130323
  • [学会発表] 漢方薬とTRPチャネル:大建中湯の薬理作用メカニズム

    • 著者名/発表者名
      堀江俊治
    • 学会等名
      第15回千葉消化管運動機能研究会
    • 発表場所
      三井ガーデンホテル千葉
    • 招待講演
  • [学会発表] アリルイソチオシアネートによるラット胃粘膜炎症の惹起-TRPA1チャネルの関与-

    • 著者名/発表者名
      高野翔太、田嶋公人、竹内徹也、大曽根健矢、松本健次郎、堀江俊治
    • 学会等名
      第128回日本薬理学会関東部会
    • 発表場所
      早稲田大学先進理工学部

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公開日: 2015-05-28  

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