研究課題/領域番号 |
24590119
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉科学大学 |
研究代表者 |
大熊 康修 千葉科学大学, 薬学部, 教授 (20127939)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 小胞体ストレス / アルツハイマー病 / 神経分化 / 神経幹細胞 |
研究概要 |
1 酸化ストレス・小胞体ストレス・AβによるHRD1の不溶化 プレセニリンを安定発現する培養神経細胞に対し、一過性にAPPの過剰発現を行うことでAβ産生を増加させ、内因性AβによるHRD1タンパク質の不溶化を検討した結果、HRD1を含む小胞体ストレスマーカータンパク質が誘導される傾向にあることが明らかとなった。しかしながら、Aβ負荷によるHRD1タンパク質の不溶化は認められなかった。つぎに、小胞体ストレス誘導試薬であるツニカマイシンおよびタプシガルギンにより、小胞体ストレスによるHRD1の不溶化を検討した結果、小胞体ストレス応答によるHRD1の誘導は認められたが、同ストレスによるHRD1の不溶化は認められなかった。一方、過酸化水素等による酸化ストレスの惹起により、HRD1が小胞体外に凝集体を形成し、不溶化することが明らかとなった。 本研究により、HRD1はAβや小胞体ストレスに起因する細胞毒性に対しては防御因子として機能する可能性が示唆された。一方、酸化ストレスはHRD1を不溶化させることで、HRD1を介したERAD機構に対して、負の影響を与える可能性が示唆された。 2 神経分化における小胞体ストレスの役割を解明する目的でP19細胞を用いて胚細胞から神経細胞へ分化させる過程に低濃度のツニカマイシンによる小胞体ストレスを与えた。その結果、10 ng/mlのtunicamycinは細胞生存率および細胞増殖に影響しなかった。この条件下で、対照群に比べ、ツニカマイシン暴露群でグリア分化が抑制されると同時に神経分化が促進された。さらに、神経幹細胞および神経細胞に特異的に存在するユビキチンリガーゼHRD1は、tunicamycinにより神経幹細胞内で増加し、この増加したHRD1を発現抑制することでツニカマイシン誘導性神経分化の異常を対照群と同程度に回復することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の研究実績の概要に記述した成果を基に、学会発表として、2013年3月の日本薬理学会年会および、同3月の日本薬学会年会に発表した。また、その成果を国際雑誌に投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
1)HRD1ノックアウトマウスにおけるHRD1減少に伴うAD発症 HRD1減少によってADが発症するか否かを明らかにするため、HRD1ノックアウトマウス脳において、Aβやリン酸化Tauの蓄積、神経変性が観察されるか生化学的・免疫組織学的に検討し、さらに学習記憶能力の低下が認められるかについて、Y字型迷路試験や新奇物質探索試験、ステップスルー型受動的回避学習試験など行動科学的な解析も行う。学習記憶能力は教室所有の機器にて評価する。 2)小胞体ストレスによる神経細胞分化異常に関与する転写因子 神経分化の過程において、小胞体ストレスおよびHRD1により制御される転写調節機構を明らかにする目的で、神経分化に関与する、bHLH遺伝子発現変化を、正常細胞、小胞体ストレス負荷細胞、HRD1発現抑制細胞を用いて検討する。 3)胎児期への小胞体ストレス負荷と神経発達障害との関係 妊娠期投与で自閉症を誘発する、バルプロ酸・サリドマイドを投与する。また胎児に直接小胞体ストレス負荷する目的で、妊娠マウスに小胞体ストレス誘導試薬を投与する。胎児脳および生後脳における小胞体ストレスセンサー分子、およびシナプス接着因子neurexinなどの発達障害関連因子の時間依存的な発現変動を解析する。またストレスを与える胎児期を変化させることで、ストレスに脆弱な時期も決定する。神経発達障害についてはY字型迷路試験などの行動異常評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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