研究課題/領域番号 |
24590127
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
小林 恒雄 星薬科大学, 薬学部, 教授 (90339523)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 血管 / 糖尿病 / インスリン抵抗 |
研究概要 |
1)糖尿病時におけるインスリン誘発Akt/eNOS 経路活性内皮依存性弛緩とGRK2/β-arrestin2 経路の関係について検討した。自然発症2型糖尿病モデルob/obマウスの胸部大動脈において、インスリン誘発Akt/eNOS 経路依存性血管弛緩反応の減弱及びNO産生の減少が確認され、この弛緩反応の減弱及びNO産生の減少は、GRK2を抑制する(GRK2 siRNAやGRK2-inhibitor使用等)ことにより改善された。これらの反応はβ-arrestin2 siRNAの処置により消失した。以上の結果から、インスリン抵抗を呈した胸部大動脈において、膜移行を起こしたGRK2は負の制御因子として働き、β-arrestin2を介してAkt/eNOSシグナル伝達を抑制することにより、糖尿病性血管内皮障害を増悪させていることが明らかとなり、GRK2の抑制がインスリン抵抗糖尿病性血管障害の治療戦略となりえることが示唆された。2)糖尿病群においてはIRS/eNOS pathway 蛋白質発現の低下、NO産生およびインスリン弛緩反応の減弱が認められた 。アンギオテンシン2 の前処置によりインスリン弛緩反応の減弱、膜分画における PTP1B 発現の増加が認められた。さらに PTP1B inhibitor と アンギオテンシン2 を同時処置したところ、両群共に インスリン弛緩反応、NO 産生、蛋白質発現が改善した。以上のことからインスリン抵抗時における インスリン弛緩反応の減弱は、IRS1/eNOS/NO pathway の障害に起因しており、アンジオテンシン2/PTP1B pathway の恒常的活性化により引き起こされていると考えられる。以上の結果から、 アンジオテンシン阻害薬、PTP1B inhibitor は、インスリン抵抗時における血管障害の新しい治療戦略を提唱するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究は、ラット及びマウスにおける微小血管は、非常に小さく分子生物学的実験を行うには、効率的ではないため、比較的大きな血管を用いてスクリーニングを行った。その中から、インスリン抵抗を呈した胸部大動脈において、膜移行を起こしたGRK2は負の制御因子として働き、β-arrestin2を介してAkt/eNOSシグナル伝達を抑制することにより、糖尿病性血管内皮障害を増悪させていることが明らかとなり、GRK2の抑制がインスリン抵抗糖尿病性血管障害の治療戦略となりえることが示唆し、同様に、アンジオテンシン阻害薬、PTP1B inhibitorもまた、インスリン抵抗時における血管障害の新しい治療戦略を提唱した。
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今後の研究の推進方策 |
GRK2, PTP1Bタンパク質について、更にin vitro, ex vivo的実験を下に検討する。内臓脂肪への影響を核磁気共鳴イメージング装置 (MRI) を用いて比較検討すると共に、骨格筋毛細血管への拡張能をプレッシャーマイオグラフ等を用いて検討し、その後、腸間膜動脈、骨格筋細動脈などの血管、肝臓や脂肪組織等を摘出し、血管内皮細胞機能や遺伝子発現、タンパク質活性を検討する。in vivo より因子解析を行い、糖尿病罹患期間・程度とインスリンを含む様々な薬物投与の効果、血糖コントロール、angiotensin、脂質、血中インスリン値、などの血液因子の影響についても情報提供する。また、同時にsiRNA を作成し、ラット大動脈血管内皮細胞、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞、ヒト皮膚微小血管内皮細胞などを用いて、新規タンパク、もしくはNotch1、Foxo1等の転写因子のノックダウンを試み、NO 産生やAkt活性、同時にGRK2、PDK1、PYK2、Src、IRS のリン酸化の検討を行いインスリンシグナルの影響を、a)免疫沈降-ウエスタンプロット法を用いてタンパク相互作用、b) 二次元電気泳動を用いて、プロテオソーム解析等を行いつつ、新規タンパク質の検討をする。細小血管である腸間膜動脈床の環流もしくは第2-3分岐を用いarrestinとAktのcomplexを比較検討し、arrestin, Akt, GRK2 などのタンパク質とプロテオソーム解析等を大動脈、腸管膜動脈床を用いて検討する。以上の実験から、種々な糖尿病モデルの細小血管機能とAkt/NOS pathway を中心としたインスリン抵抗における新規生理機能やsignal pathwayの解明を行い、治療効果、予防効果を提供する。
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次年度の研究費の使用計画 |
来年度の購入消耗品は、PCR関連試薬、Western blotting関連試薬、各種抗体、オリゴヌクレオチド、siRNA、plasmid発現ベクター、その他分子生物学用試薬、糖尿病ラット、糖尿病マウスである。高価な分子生物学用の試薬(RNA抽出キット、PCR関連試薬、Western blotting関連試薬、オリゴヌクレオチド、DNA polymerase、発現ベクターなど)を用いるが各試薬は2-3万円、1 kit 10万円以上するものもある。また、siRNA に関しては、1設計合成を行うのに5万円以上かかり、幾つかの設計を必要とする。更に、実験初期段階においては、安価な薬物によって誘導するストレプトゾトシン等を用いた糖尿病動物を用いるが、実験後期においては、正確性信憑性を得るために高価な自然発症糖尿病動物(db/db マウス、ob/obマウス)を必要とする、これらの動物は、1匹1-2万円する。以上の理由により次年度は、120万円を必要とする。
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