研究課題/領域番号 |
24590130
|
研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
米山 雅紀 摂南大学, 薬学部, 講師 (00411710)
|
研究分担者 |
倉本 展行 摂南大学, 薬学部, 准教授 (60324092)
|
キーワード | ニューロン新生 / 活性酸素シグナル / 一酸化窒素 / NADPHオキシダーゼ / ニューロン障害 / 海馬歯状回 |
研究概要 |
成体哺乳動物中枢神経系において、ニューロン障害後にニューロン新生が促進されることは周知の事実である。有機スズ化合物であるトリメチルスズ(TMT)により作成した海馬歯状回ニューロン障害・再生モデル動物において、歯状回ニューロン障害に伴い同部位では活性酸素種の1つである一酸化窒素(NO)の増加が認められる。すなわち、そこに存在する神経系幹・前駆細胞に対してNOを始めする各種活性酸素シグナル入力あるいは付加タンパク質が機能的に関与する可能性は十分に考えられる。本研究ではニューロン変性後のニューロン新生過程での活性酸素の新規生理的役割を明らかにするために、海馬歯状回ニューロン障害後のニューロン新生制御メカニズムにおける活性酸素シグナル入力とその関連分子の影響について解析した。 海馬歯状回ニューロン障害・再生モデル動物の歯状回から、インビトロ条件下で神経系幹・前駆細胞を培養した。得られた歯状回由来神経系幹・前駆細胞に対して、Apocynin(NADPHオキシダーゼ阻害薬)、L-NAME(NO合成阻害薬)およびNOC18(NOジェネレーター)活性酸素シグナル入力の影響について解析した。 神経系幹・前駆細胞は培養条件下において活発な増殖能を示す。ApocyninおよびL-NAMEは培養神経系幹・前駆細胞の増殖を著明に減少させた。さらに、NOC18は培養神経系幹・前駆細胞の増殖を有意に増加させた。 以上のことから、ニューロン障害後のニューロン新生メカニズムの一部に活性酸素シグナルとしてNOおよびNADPHオキシダーゼによる神経系幹・前駆細胞の制御メカニズムが存在する可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有機スズ化合物であるトリメチルスズ(TMT)により作成した海馬歯状回障害・再生モデル動物の海馬歯状回から得られた細胞は培養条件下において活発な増殖能を示し、神経系幹・前駆細胞のマーカータンパク質であるnestinに陽性であったことから、本研究において本モデル動物から効率よく神経系幹・前駆細胞を培養することが可能となった。ApocyninおよびL-NAMEは、ニューロン障害・再生モデル動物海馬歯状回由来培養神経系幹・前駆細胞の増殖を抑制することが明らかとなった。また、NOC18は培養神経系幹・前駆細胞の増殖を促進することが明らかとなった。すなわち、ニューロン障害後のニューロン再生過程での神経系幹・前駆細胞の制御において、一酸化窒素(NO)およびNADPHオキシダーゼが重要なシグナル分子の1つである可能性が示唆された。 さらに、NO等の活性酸素種およびNADPHオキシダーゼをターゲットとしたニューロン新生促進薬をスクリーニングおよび開発できる可能性も見出された。 また、本研究に関連して学術論文3報および学会発表17回を報告出来たことは特筆に値する。
|
今後の研究の推進方策 |
中枢神経変性疾患の治療に向けてニューロン障害後に発生した活性酸素種による新規生理的役割の観点からそのニューロン再生過程における内在性神経系幹・前駆細胞に着目して、海馬歯状回ニューロン障害・再生モデル動物を用いて、神経系幹・前駆細胞に対する活性酸素種の役割と詳細な細胞内シグナル伝達メカニズムの解析および最終的に再生過程に重要な因子の同定を試みる。また、関連分子である活性酸素種とそのシグナル伝達に続く機能的タンパク質の酸化修飾との関連性を明らかにすることで本研究の推進を図る。また、ニューロン変性後のニューロン再生をターゲットとしたニューロン新生促進薬の探索と本研究が発展する可能性を追求する。
|