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2013 年度 実施状況報告書

虚血性網膜症の治療標的分子としてのアペリンに関する研究―遺伝子改変動物を用いて―

研究課題

研究課題/領域番号 24590131
研究機関摂南大学

研究代表者

前田 定秋  摂南大学, 薬学部, 教授 (00135732)

研究分担者 山室 晶子  摂南大学, 薬学部, 助手 (20340862)
吉岡 靖啓  摂南大学, 薬学部, 講師 (40330360)
石丸 侑希  摂南大学, 薬学部, 助教 (80611607)
キーワード虚血性網膜症 / 血管成熟化 / apelin / MCP-1
研究概要

これまでに我々は、虚血性網膜症モデルマウスを用いた検討から、apelinが血管内皮細胞の過増殖を引き起こすことによって異常な血管の形成を促進させることを明らかにしてきた。これらのことから、apelin発現を抑制することによって血管成熟化を誘導できる可能性が考えられる。培養細胞を用いてapelin発現抑制の血管成熟化への影響について検討した。その結果、apelin発現を抑制するapelin siRNAを導入した血管内皮細胞株bEnd.3細胞において、血管成熟化因子の一つであるMCP-1の発現誘導がみられた。このapelin発現抑制によるMCP-1発現誘導の機構を明らかにするためにMCP-1の転写因子とその制御因子を解析した結果、apelin siRNAを導入したbEnd.3細胞においてSmad3の活性化およびAktの活性低下がみられた。また、apelin siRNA導入によるMCP-1の発現誘導は、Smad3阻害剤であるSIS3の添加により抑制された。さらに、PI3K/Akt阻害剤であるLY294002を処置したbEnd.3細胞では、Smad3の活性化およびMCP-1の発現誘導がみられた。これらの結果から、apelin発現抑制によるMCP-1発現誘導の機構は、PI3K/Aktシグナル抑制によるSmad3の活性化を介したものである可能性が示唆された。Apelin発現抑制により発現上昇したMCP-1が血管壁細胞の遊走能に影響を与えるか否かを明らかにするため、apelin siRNAを導入した血管内皮細胞の培養上清の血管壁細胞の遊走能への影響について検討した結果、本培養上清には、血管壁細胞株p53LMAC01細胞の遊走促進作用がみられ、この遊走促進作用はMCP-1受容体アンタゴニストであるRS102895の添加により抑制された。以上の結果より、網膜のapelin発現を抑制することによって血管成熟化を誘導できる可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は、虚血性網膜症において失明の原因となる脆弱な新生血管を強固にすること、すなわち血管成熟化を誘導することである。昨年度は、本病態モデルマウスの網膜のapelin発現を抑制すると血管成熟化を誘導できることを示した。本年度は、培養細胞を用いて、このapelin発現抑制による血管成熟化誘導の機構について検討を行った。その結果、培養血管内皮細胞のapelin発現を抑制すると、PI3K/Aktシグナル抑制によるSmad3の活性化を介して血管成熟化因子の一つであるMCP-1が発現誘導されることを明らかにした。さらに、このapelin発現抑制によって発現上昇したMCP-1が培養血管壁細胞の遊走促進作用を有することを見出した。昨年度のin vivo実験系を用いて得られた結果と同様に、本年度のin vitro実験系を用いた検討においてもapelin発現の抑制が血管成熟化を誘導することを示す結果が得られたことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

これまでの検討から、虚血性網膜症モデルマウスの網膜のapelin発現を抑制することで血管成熟化を誘導できる可能性が示された。今後は、このapelin発現抑制によって誘導された成熟血管が網膜内に形成されるか否かを明らかにすることを目的に研究を進める。具体的には、apelin遺伝子を欠損させた虚血性網膜症モデルマウスを用いて、血管形成の足場として機能する網膜アストロサイトやアストロサイトのネットワークの鋳型となる網膜神経細胞に対するapelin発現抑制の影響について検討する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Inhibition of apelin expression switches endothelial cells from proliferative to mature state in pathological retinal angiogenesis.2013

    • 著者名/発表者名
      Atsushi Kasai, Yuki Ishimaru, Kosuke Higashino, Kohei Kobayashi, Akiko Yamamuro, Yasuhiro Yoshioka, Sadaaki Maeda
    • 雑誌名

      Angiogenesis

      巻: 16(3) ページ: 723-734

    • DOI

      10.1007/s10456-013-9349-6

    • 査読あり
  • [学会発表] 虚血性網膜症モデルマウスにおけるフィブロネクチンの発現上昇に対するアペリン欠損の影響

    • 著者名/発表者名
      石丸侑希、愛知祥、小林ちひろ、藤原秀規、杉本藍、山室晶子、吉岡靖啓、前田定秋
    • 学会等名
      第87回日本薬理学会年会
    • 発表場所
      仙台国際センター
  • [学会発表] 虚血性網膜症モデルマウスの網膜における異常血管形成に伴うfibronectinの発現上昇に対するapelin遺伝子欠損の影響

    • 著者名/発表者名
      石丸侑希、愛知祥、小林ちひろ、藤原秀規、杉本藍、山室晶子、吉岡靖啓、前田定秋
    • 学会等名
      日本薬学会第134年会
    • 発表場所
      熊本市総合体育館

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公開日: 2015-05-28  

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