研究課題/領域番号 |
24590132
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
三上 雅久 神戸薬科大学, 薬学部, 講師 (20330425)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | コンドロイチン硫酸 / グリコサミノグリカン / 神経突起伸長 / 糖鎖 / 発現制御 / 受容体 / 細胞内シグナル伝達 / 酵素 |
研究概要 |
コンドロイチン硫酸(CS)は、障害を受けた成体脳において軸索再生を阻害する分子として振る舞う一方、神経突起の伸長を促進する分子としての一面も併せもつ。このような一見矛盾した働きは、CSの硫酸化構造の違いに起因すると考えられている。最近申請者らは、“高硫酸化CSを識別するCSレセプター”を世界ではじめて同定し、“CSがリガンドとして特定のレセプターの活性化を導きうる”という新しいコンセプトを打立てた。そこで、本研究では、神経再生医療への応用を指向したCSによる神経突起伸長制御機構の解明を目指し、機能的CSレセプター分子のさらなる探索とそれらにより発動するシグナル伝達経路の同定を目標に掲げた。 CSレセプター候補分子の探索ならびにCSの発現変動によって影響を受ける細胞内シグナル伝達経路の足がかりを得るため、既に確立されているC2C12細胞の骨格筋分化系におけるCSの役割に着目したところ、時期特異的なCSの発現低下が骨格筋の分化や再生過程に必要であることを見出した。さらにその研究過程で、CSの発現レベルの変動によって、少なくともホスファチジルイノシトール 3-キナーゼ(PI3K)/Akt経路の活性化が誘導されることを明らかにした。CSによって制御されうる新たな細胞内シグナル経路の同定は、CSによる神経突起伸長制御に関連するCSレセプター分子と下流シグナル伝達経路の理解に大きく貢献するものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新たなCSレセプター候補分子のスクリーニングならびにCSの発現変動によって影響を受ける細胞内シグナル伝達経路の絞り込みを行うことを目的とした代替法での解析にやや時間を要した。 高硫酸化CSの一つであるCS-Dと結合するCSレセプター候補分子については、BIAcoreを用いた分子間相互作用解析などにより現在絞り込みをかけており、得られた候補分子について、順次機能解析に供する準備が整っている。
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今後の研究の推進方策 |
高硫酸化CS-Eを認識するCSレセプターであるcontactin-1の類縁分子を中心に、高硫酸化CS-Dを認識するCSレセプター分子の同定を試みるとともに、それら分子群とCS-Dによる神経突起伸長抑制作用との関連性を探る。一方で、既に確立した骨格筋分化モデル系などを利用し、引き続きCSを感知する細胞膜上のレセプター候補分子のスクリーニングを並行して実施し、当該分子群が神経突起伸長制御に関わるCSレセプター分子として機能しうるかを検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に引き続き、さらなるCSレセプター候補分子の探索を実施する。最終的に複数のCSレセプター分子が同定できた場合には、これら分子間での機能的関連性を組換えタンパク質を用いた相互作用解析や脳における発現(共局在性など)を調べることにより考察する。 さらに、SrcファミリーメンバーやPI3Kなどを介する細胞内シグナル系に対する選択的阻害剤などを用いて、CSにより誘導される神経突起の伸長や形態変化がどのような細胞内シグナル経路を介して制御されているかを解析する。また、神経細胞におけるCSレセプター候補分子の過剰発現やノックダウンにより、高硫酸化CSの刺激に応答していずれの細胞内シグナルカスケードが影響を受けるかを網羅的に調べ、個々のCSレセプター分子の下流シグナル経路を明らかにする。
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