研究課題/領域番号 |
24590133
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
岸本 泰司 徳島文理大学, 薬学部, 准教授 (90441592)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 小脳学習 / 運動学習 / 消去 / アルツハイマー病 / 瞬目反射条件付け / 遺伝子改変マウス / 忘却 |
研究概要 |
瞬目反射条件付けにおける条件反射は、記憶成立直後にCSのみを数十回程度聴かせるとで学習率が半分以下にまで急速に低下する。一方、CSを聞かせない場合には、数ヶ月以上にわたって記憶は維持されるものの、徐々に失われていく。本研究は、この急速あるいは長期的に消去される「記憶の忘却の機構」を、瞬目反射条件付けの学習系を用いて明らかにすることを目的とするものである。 ◯ 内在性カンナビノイド関連分子および代謝型グルタミン酸受容体に着目して、これら分子の瞬目反射条件付け(遅延課題およびトレース課題)の消去過程における役割を調査した。この結果、小脳依存性の遅延課題と海馬依存性トレース課題で、それぞれ対照的に、同一分子が記憶の獲得と記憶の消去に関与している現象を見出した。 ◯ H26年度に行う予定であった、「脳病態に起因する記憶消去メカニズムの解明」についても、今年度に開始し、海馬病態モデルとしてのアルツハイマー病モデルマウスよび、小脳依存性病態モデルとしてのプリオンタンパク質ノックアウトマウスの瞬目反射条件付けの解析を行った。アルツハイマー病モデルマウスでは、学習獲得の障害に先行して消去の異常が見られることが明らかになった。一方、プリオンタンパク質ノックアウトマウスでは、消去の異常は観察されなかったものの、学習のタイミングの異常が明らかとなり、正常型プリオンタンパク質が運動学習のタイミングに重要な役割を担っていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでほとんど報告されていない、瞬目反射条件付けの短期および長期の消去過程の分子メカニズムについて、遺伝子改変マウスを用いて調査する実験系を確立した。特に、アルツハイマー病モデルマウスで、本学習の消去過程の異常を検出したのは、今回の結果が初めてとなる。研究成果の一部は、既に査読付き英文雑誌3報に掲載済みである(Kishimoto et al., 2012 Neurosci. Lett.; Kishimoto and Kirino, 2013 Neurosci. Lett.; Kishimoto et al., PLOS ONE) 。これらの研究成果は社会的にも大きな意義が認められ、朝日新聞全国版(科学面)、徳島新聞、毎日新聞、読売新聞、長崎新聞の新聞5紙に、研究結果が紹介された。また、テレビニュースでも2番組で、代表者が出演して研究内容を紹介した。
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今後の研究の推進方策 |
1. 瞬目反射条件付け消去過程に関与する機能分子のさらなるスクリーニング 2. 可逆的遺伝子操作を用いた消去過程観察の方法論の確立 3. 発達・加齢による記憶の消去メカニズムの解明
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次年度の研究費の使用計画 |
特に、遺伝子の可逆的制御にかかる薬品(ドキシサイクリン)および、遺伝子改変動物を購入予定である。成果発表のための学会活動参加費にも前年以上に充てる必要がある予定である。
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