研究課題/領域番号 |
24590134
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齋藤 一樹 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特任准教授 (10192585)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | EGFレセプター / 二量化阻害ペプチド / レセプター創薬 / 親和性増強 / 側鎖改変 |
研究概要 |
これまで、申請者は、自ら明らかにした上皮成長因子(Epidermal Growth Factor; EGF)レセプターの細胞外領域とリガンドEGFとの複合体の結晶構造にもとづき、二量体界面に存在する“二量化アーム”の先端ループ構造を模倣した環状ペプチドが、10μM前後の濃度でEGFレセプターの活性化を阻害することを見出した。そこで、本研究では、その環状ペプチドの構造を改変してより強力な阻害剤を設計することを目的としている。 本年度は、その環状ペプチドを構成するアミノ酸をアラニン置換したライブラリを固相上で混合合成し、キャピラリー電気泳動(CE)と質量分析計(MS)を組み合わせたスクリーニング手法を用いて、それらアラニン置換ライブラリーのEGFレセプターに対する親和性を評価する予定であった。しかし、年度途中の不慮の事故によりスクリーニングシステムのMSが故障し、代替部品の手配に長い時間がかかることが明らかとなった。 そこで、急遽、研究実施計画の順序を変更し、まず、化学合成によって数多くの環状ペプチドアナログを調製しそれらのEGFレセプター二量化阻害活性を測定することで、環状ペプチドの阻害活性に必要なプロパティを洗い出すことにした。すでにDアミノ酸で構成し配列を逆にしたレトロインバーソ体がもとの環状ペプチドと同程度のレセプター二量化阻害活性を示すことが確認されたので、さらに細胞レベルでのレセプター自己リン酸化や細胞増殖に対して阻害効果があることを確認した。また、この結果は、環状ペプチドのレセプター阻害活性が、主鎖の配向ではなくおもに側鎖の官能基によって規定されていることを示しているため、いくつかの残基の側鎖を改変して活性の変化をみた。残念ながらもとの環状ペプチドを大幅に上回る阻害活性を示すアナログはなかったが、いくつかの阻害活性に関わる側鎖を同定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
質量分析装置の故障により当初計画の流れを変更しなければならなくなったが、計画変更の判断が迅速であったため、3年間の基盤研究(C)全体からみれば滞りなく研究を推進できたと言える。特に、交付申請書提出の時点では平成24年度は短報のみを発表する予定だったが、実際にはフルペーパー1報を発表できたことを鑑みれば、迅速な研究計画の変更が功を奏して、全体としての研究達成度が依然として順調に進展していることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、当初、平成24年度に計画していたスクリーニング実験を実施し、EGFレセプターの活性化を阻害する環状ペプチドのアナログの広汎な親和性測定を実施する。平成24年度に合成したアナログの阻害活性評価の結果から、阻害ペプチドの環構造の縮環は活性向上にあまり効果がないようなので、環構造を構成するアミノ酸の側鎖の役割についてスクリーニング手法を用いて重点的に研究を行ってゆく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、質量分析装置の故障により研究計画の変更を余儀なくされたので、平成25年度はまずこの修理を完了したい。幸いに、平成24年度は、有機合成実験に終始していたのでそれほど多くの経費支出には至らなかったので、その剰余分を質量分析装置の修理に充て、全体としては当初の方向に研究費使用計画を戻したい。
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