研究課題/領域番号 |
24590135
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
杉山 亨 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (40242036)
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研究分担者 |
橘高 敦史 帝京大学, 薬学部, 教授 (00214833)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 核酸 / 遺伝子 / ゲノム / 有機化学 |
研究概要 |
ペプチド核酸(PNA)は、DNAの糖-リン酸骨格がアミノエチルグリシンを単位とするペプチドに置き換えられた人工核酸で、配列に制限はあるものの二本鎖DNAに侵入して相補的な配列にワトソン・クリック型塩基対で結合できる「ストランドインベージョン」という優れた能力を持っている。本研究では、これまで未開拓であったβ位を修飾したキラルPNAの系統的合成のための一般的方法論の開拓及び合成したキラルPNAの機能評価を行う。β位に適切な修飾を施すことで、DNAとの結合を強め、ストランドインベージョンで標的にできる配列の一般化を目指す。我々は先にβ位にメチル基を導入したPNAを合成し、そのDNA結合の解析結果からDNAに結合できるのはβ位がS配置の場合に限定され、R配置の場合は全くDNAに結合できないことを明らかにしている。これに基づき本研究で開発する新規PNAモノマーでは、β位の不斉炭素をS配置に固定することとした。 今年度はβ位にアミノ酸リジン側鎖を持った光学活性PNAモノマーを設計・合成した。モノマーの主鎖アミノ基はアジド基としてマスクし、核酸塩基部位は保護基が不要で、合成容易なチミンとした。L-リジンを出発原料として、Boc基で保護したリジン側鎖をβ位にもつチミンモノマーを合成した。当初は収率の悪い行程もあったが、反応条件を種々検討した結果、実用的な収率で合成できるようになった。こうして得られたアジド型モノマーをのPNAオリゴマーの固相合成に使用した。固相担体上でのアジド基の還元にはトリメチルホスフィンを使用し、それ以外の合成条件は通常のFmoc法と同じにして、キラルユニットを含むPNAオリゴマーを合成した。詳細なDNA結合解析は次年度に行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光学活性PNAモノマーの合成までが当初の今年度の計画であったが、想定よりも短期間でモノマー合成が達成でき、オリゴマー合成まで進めることができた。そこで、DNA-PNAヘテロ二本鎖の安定性を評価するために融点測定用の分光光度計を購入することにしたのだが、装置を販売している海外メーカーの誤情報のために分光光度計を期間内に購入することができなかった。そのため、融点測定ができず、当初の計画以上に進展できるはずが結果的に当初計画までの進展に留まった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、アジド型新規モノマーを使ったPNAオリゴマーの合成はできるようになったが、現時点では合成効率が悪く精製が困難である。そこで、まず固相担体上でアジド基を効率良くアミノ基に還元する適切な反応条件を検討する。良い還元条件が見出せない場合はモノマーの段階でアジド基をアミノ基に還元してFmoc保護PNAモノマーへと変換し、これを使ってオリゴマー化を行う。DNA結合能力を詳細に調べ、そのデータをもとにβ位の機能化を行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度、想定以上に研究が進展したため、予算の前倒し申請を行なって分光光度計の購入を計画した。海外メーカーの製品を選定したのだが、メーカー側が機種選定の時点では出来ると言っていた測定法が、実際にはできないことが2月は入ってから判明した。メーカーの担当者が仕様確認を怠ったために起こったトラブルなのだが、時期が遅く、他のメーカーを探したのだが間に合わず予算を年度内に執行できなくなってしまった。やむを得ず分光光度計購入分の予算を次年度に繰越し、国内メーカーから分光光度計を購入する計画である。
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