研究課題/領域番号 |
24590135
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
杉山 亨 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (40242036)
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研究分担者 |
橘高 敦史 帝京大学, 薬学部, 教授 (00214833)
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キーワード | 核酸 / 遺伝子 / ゲノム / 有機化学 |
研究概要 |
ペプチド核酸(PNA)は、DNAの糖-リン酸骨格がアミノエチルグリシンを単位とするペプチドに置き換えられた人工核酸で、いくつかの二本鎖DNAに侵入して相補的な配列にワトソン・クリック型塩基対で結合できる「ストランドインベージョン」という優れた能力を持っている。本研究では、これまで未開拓であったβ位を修飾したキラルPNAの系統的合成のための一般的方法論の開拓及び合成したキラルPNAの機能評価を行っている。平成24年度にPNA骨格β位にアミノ酸リジン側鎖を持ち、主鎖アミノ基をアジド基としてマスクした光学活性PNAモノマーの合成を達成した。しかし、それを組込んだキラルPNAオリゴマーの合成を試みたところ、アジド基の還元効率が悪く、目的のPNAオリゴマーが低収率でしか得られなかった。そこで、今年度はまず、還元条件を検討し、アジド基のアミノ基への変換効率を向上させた。現在では、解析に十分な量のPNAオリゴマーが得られるようになった。分光光度法による融点測定によってDNA-PNAへテロ二本鎖の安定性を調べたところ、Tmが若干低下する傾向がみられたが、DNAとの結合能力は十分に保持されていることがわかった。また、今回合成したキラルPNAの塩基識別能力はアキラルなPNAよりも優れていることも分かった。PNAのリジン側鎖とDNAのリン酸との間に働く静電的相互作用は配列に非特異的であることを考えるとこの結果は興味深い。 次いで、PNAの機能化を目的にリジン側鎖の保護基をBoc基からFmoc基に置き換えたPNAモノマーを合成した。このモノマーを使って固相担体上でPNAオリゴマーの側鎖に金属結合部位を導入した。得られた機能化PNAは相補的配列を持ったDNAを生理的条件で切断することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究で固相担体上でのアジド基の効率的還元が課題として残されていた。本年度は還元条件を見直すことで、目的とするリジン側鎖を持つキラルPNAの固相合成を達成した。分光光度法による融点測定により、β位に機能化の足場となるリジン側鎖を導入してもDNA結合能力が保持されることが確認できた。この結果をもとに、本年度の計画通り機能化に適した新たなPNAモノマーを設計、合成し、その応用としてDNA切断能力のあるPNAを開発できた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、PNAオリゴマーの側鎖部分に機能を持たせられるようになった。PNA側鎖に金属結合部位を導入することにより、DNA切断活性を付与することができたので、今後、比較的長い配列を認識、切断できる人工分子として研究を進める予定である。また、側鎖の機能化に加えて、核酸塩基を人工塩基に置き換えた別タイプのPNAの開発も計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度はほぼ計画通りに予算を使用した。定期的にPNAの合成原料を購入しているが、年度末の原料購入のタイミングがずれて年度をまたぐことになったため、その分の予算を次年度に繰越した。 次年度も引続きPNAモノマーの合成を行なう予定であり、繰越分は当初の計画通り合成原料の購入に使用する予定である。繰越額は小額であり、平成26年度の早い時期に使用する予定である。
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