研究課題/領域番号 |
24590136
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
杉田 和幸 星薬科大学, 薬学部, 教授 (60542090)
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キーワード | タンパク質間相互作用 / Cotylenin / 14-3-3タンパク質 / PCSK9 / LDL受容体 / 構造活性相関 / 全合成 |
研究概要 |
タンパク質間相互作用(PPI)制御法開発研究の一つとして、PPIを安定化するCotyleninの全合成を実施している。本年度は2つのパートについて、光学活性体の合成法を確立することができた。しかしながら、昨年度報告したカップリング反応が低収率でしか進行しないことが判明したため、立体障害を低減した基質でのカップリング反応を実施し、収率の改善を達成することができた。更に4級炭素を構築後、得られたジアステレオマーの一つを用いて、キー反応である8員環形成反応に成功した。得られた3環性化合物のX線結晶構造解析を実施した結果、アルデヒドパートについてすべて目的の立体化学を有していることを確認することができた。一方、ケトンパートと8員環橋頭位4級炭素の立体化学が目的のものではないことが判明したため、目的の立体化学を有するジアステレオマーを用いて合成を実施している。また、立体選択的な4級炭素についても構築法を開発中である。また、シュガーパートについても、2つのパートについてほぼ合成完了しつつある。 PCSK9は、LDL受容体に結合して分解を促進することが報告されており、その阻害薬は次世代のLDL低下剤として大きな期待が寄せられている。本研究ではPCSK9とLDL受容体の結合(PPI)を阻害する小分子を設計、創製して評価することを目的としている。本年4月より専任で研究する学生を迎えることができた。また、ドッキング計算ソフト「Discovery Studio」のタンパク質構造を動かすことができるモジュールを購入し、新規にデザイン(FBDD等)を実施し、現在合成を実施している。特に、脂溶性のバランスを考慮し、また、医薬品に適さない構造については再デザインを実施し、代謝安定性および毒性の発現の可能性を低減した化合物を選抜した。既にいくつかの化合物を合成済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一昨年2012年10月に東京大学分子細胞生物学研究所分子標的薬剤設計研究分野より、星薬科大学薬品製造化学教室へ教授として赴任した。異動にともない、引っ越し、諸手続き、研究環境の整備、新研究室残存教員の研究課題へのマンパワー供給維持、研究の移管手続き、新規学生の配属待ち、教育等の影響で遅れが生じている。 しかしながら、昨年4月より大学院生を迎えてCotylenin合成の研究を再開し、8員環の形成反応と立体化学の確認をX線結晶構造解析により行うことができた。また昨年11月よりCotylenin簡略化小分子化合物のデザインとドッキングスタディ、小分子化合物の合成と、PCSK9阻害薬のデザイン、ドッキング、合成を実施する学生をそれぞれのテーマで確保できたことから、可及的すみやかに目標を達成すべく、研究に取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
計画に従い、現在実施中の研究を継続する。 Cotyleninの全合成に必要な2つのパートの光学活性体での合成法については、ほぼそのまま使用できるが、その後のルート変更に対応したものを開発中である。また、カップリング反応生成物のうちもう一方のジアステレオマーを用いて、アグリコン部分の合成を速やかに終了させたい。さらに、4級炭素の選択的構築法を開発する。また、シュガー部についてはほぼ合成完了しつつある2つのパートを完成させ、3つのエーテル結合がうまく形成され、シュガー部の骨格が構築できるか早急に確認したい。うまく形成されない場合は、より立体障害が低減された基質を用いたカップリング、さらには、段階的なエーテル結合の形成を検討する。2月より、アグリコン部分に博士課程2年生1名、シュガー部分には4年生3人が専任で取り組んでいる。 また、Cotylenin簡略化小分子化合物については、初期のデザインについてほぼ終了しており、合成ルートを考案し合成を開始した。できる限り合成を速やかに終了させる。タンパク質間相互作用の安定化作用に期待したい。本研究専任の4年生が取り組んでいる。 PCSK9阻害薬についても現在合成中であり、早期に合成を終了し、阻害活性を測定する。PCSK9の阻害活性が確認できた場合には、製薬企業を中心に外部研究機関との共同研究を実施し、in vivo活性の評価の実施を検討する。本研究には非常に優秀な4年生が専任で取り組んでいる。
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