研究課題/領域番号 |
24590137
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
棚谷 綾 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 准教授 (40361654)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ステロイドホルモン / 核内受容体 / 蛍光プローブ / アンドロゲン / プロゲステロン / アンタゴニスト / フタラジノン / クマリン |
研究概要 |
ステロイドホルモンは、固有の核内受容体を介して特異的遺伝子発現を制御し、個体の成長や恒常性に重要な働きをしている。近年、ステロイドホルモン受容体をはじめとする種々の核内受容体機能の破綻や異常が、がん、自己免疫疾患、生活習慣病、脳機能疾患といった様々な疾患の発症や治療と密接に関与していることが明らかにされ、新たな臨床応用の可能性が指摘されている。本研究では、ステロイドホルモン受容体の機能を厳密に制御する新規モデュレーターや機能解析のための蛍光プローブ等を創製し、ステロイドホルモン受容体を標的とする医薬開発基盤を構築することを目的とする。本年度は以下の研究成果を得た。 1)新規アンドロゲンアンタゴニストの創製:アンドロゲンアンタゴニストは、前立腺癌の治療に用いられているものの、他のステロイドホルモン受容体への作用や、受容体の変異に基づく薬剤耐性等が臨床上、問題となっている。そこで、これまでと異なる骨格構造を有するアンドロゲンアンタゴニストを設計、合成した。その結果、新規フタラジノン誘導体に強力なアンタゴニスト活性を見いだした。 2)蛍光性プロゲステロン受容体アンタゴニストの創製:本研究者は、クマリンを基本構造とするプロゲステロン受容体アンタゴニストを見いだしている。本化合物は、プロゲステロン受容体結合に伴い、蛍光強度が上昇することから、プロゲステロン受容体機能解析の蛍光プローブとなり得るものの、結合強度、選択性、蛍光量子収率の向上が望まれる。これまでに得た構造活性相関をもとに、新規クマリン誘導体を設計、合成した。その結果、プロゲステロン受容体アンタゴニスト活性や蛍光量子収率が大幅に改善された化合物を見いだした。また、プロゲステロン受容体に結合することにより、蛍光強度でなく、蛍光波長が変化する化合物も見いだした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の計画である、新規アンドロゲンアンタゴニストの創製と、プロゲステロン受容体の蛍光性リガンドの創製に着いては、構造活性相関を明らかとするとともに、高活性アンタゴニストや蛍光特性の向上したリガンドを創製することができた。前者については、アンドロゲン受容体の種々の変異体に対する活性の評価を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に得られた成果をもとに、以下の項目を行う。 1)アンドロゲンの各種変異受容体に有効なアンタゴニストの創製:これまでに創製したアンドロゲンアンタゴニスト活性化合物の各種変異受容体に対する効果を検討し、その構造活性相関を明らかとし、変異受容体に有効な高活性アンタゴニストの設計、合成を行う。 2)プロゲステロン以外の核内受容体に対する蛍光プローブの創製:クマリンを骨格とした蛍光性プロゲステロンアンタゴニスト創製の課程で、他のステロイドホルモンに親和性を持つクマリン誘導体を見いだしている。その知見をもとに、アンドロゲンやミネラルコルチコイドなどのステロイドホルモン、もしくはセコステロイド骨格をもつビタミンDの核内受容体に選択的な蛍光性クマリン誘導体を設計、合成する。 以上の核内受容体リガンドや蛍光性プローブの機能を詳細に解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究経費は主に 合成及び活性評価にかかる物品費:1,000,000円 研究に必要な情報収集および成果発表の旅費:250,000円 その他(論文投稿や謝金等):50,000円 を予定している。
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