研究課題/領域番号 |
24590137
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
棚谷 綾 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 准教授 (40361654)
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キーワード | ステロイドホルモン / 核内受容体 / アンタゴニスト / アンドロゲン / プロゲステロン / クマリン / 蛍光プローブ |
研究概要 |
ステロイドホルモンは、固有の核内受容体を介して特異的遺伝子発現を制御し、個体の成長や恒常性に重要な働きをしている。近年、種々のステロイドホルモン受容体機能の破綻や異常が、がん、自己免疫疾患、生活習慣病等の様々な疾患の発症や治療と密接に関与していることが明らかにされ、新たな臨床応用の可能性が指摘されている。本研究では、ステロイドホルモン受容体の機能を厳密に制御する新規モデュレーターや機能解析のための蛍光プローブ等を創製し、ステロイドホルモン受容体を標的とする医薬開発基盤を構築することを目的とする。本年度は以下の研究成果を得た。 1)新規アンドロゲンアンタゴニストの創製:ウコンの成分であるクルクミンがアンドロゲン受容体リガンド活性を有するという報告をもとに、新規アンドロゲンアンタゴニストを設計、合成した。具体的にはクルクミンの構造要素をもとに、新規骨格をデザインし、置換基の種類や置換位置の異なる種々の誘導体を合成し、そのアンドロゲンアンタゴニスト活性をアンドロゲン依存的に増殖するSC-3細胞を用いて検討した。その結果、新規アンドロゲンアンタゴニストを見いだすとともに、その構造活性相関を明らかとした。 2)蛍光性アンドロゲン受容体アンタゴニストの創製:本研究者は、クマリンを基本構造とするプロゲステロン受容体アンタゴニストを創製し、本化合物がプロゲステロン受容体との結合に伴い蛍光強度が上昇することを見いだした。そこで、クマリン環がステロイド骨格を代替するという考えのもと、アンドロゲン受容体の蛍光性リガンド開発へと応用した。既に、プロゲステロン受容体アンタゴニスト探索の過程で、一部の化合物がアンドロゲン受容体親和性を持つことを見いだしていたので、その化合物をリードとして、種々のクマリン誘導体を合成した。その結果、幾つかの化合物にアンドロゲンアンタゴニスト活性を見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の計画である、新規アンドロゲンアンタゴニストの創製については、新しい分子設計に基づいた新規リガンドの創製とその構造活性相関の解明に成功した。また、プロゲステロン受容体の蛍光性リガンドの構造と性質の吟味から、同じくクマリンを骨格とする新規アンドロゲンアンタゴニストの開発にも成功している。現在、これらの化合物について、詳細な生物機能の解析を計画している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に得られた成果をもとに、以下の項目を行う。 1)変異アンドロゲン受容体に有効なアンタゴニストの創製:2年間で創製したアンドロゲンアンタゴニスト活性を有する化合物を選別し、各種変異受容体に対する効果を検討することで、臨床で問題となっている変異受容体による薬剤耐性を克服する化合物の創製へと展開する。 2)クマリンを骨格としたアンドロゲンアンタゴニストについては、蛍光特性を詳細に解析して、蛍光プローブとしての有用性を明らかとする。 3)プロゲステロンについては、アンドロゲンでの構造展開をもとに、新規骨格の導入を図る。
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