研究課題/領域番号 |
24590138
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
豊岡 尚樹 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 教授 (10217565)
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研究分担者 |
加藤 敦 富山大学, 大学病院, 准教授 (60303236)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | フコシダーゼ / ラムノシダーゼ |
研究概要 |
フコシダーゼあるいはラムノシダーゼはそれぞれフコース、ラムノースを加水分解する酵素であり、近年細菌細胞膜がこれらフコース、ラムノースを構成糖として備えていることから、これら加水分解酵素の選択的阻害剤が新しいタイプの抗菌剤になり得ることが示唆されている。そこで、今回フコースの構造を擬態した新規フコシダーゼ阻害剤の開発研究を行い、フェニルアルキルタイプおよびアミドタイプの2種類の阻害剤の網羅的合成ルートの開発に成功した。アミドタイプの阻害剤は最高20ナノモルのIC50値を示す阻害剤の創製に成功した。一方フェニルアルキルタイプの阻害剤では、実に最高5ナノモルのIC50値を示す極めて強力な阻害剤の創製に成功した。さらに、各種酵素阻害選択性についても検討を行い、フェニルアルキルタイプの阻害剤では、フコシダーゼを選択的に阻害することが判明し、酵素選択性も極めて良好であることも明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はフコースの構造を擬態した2種類のフコシダーゼ阻害剤のデザインを行い、それらの網羅的合成法の確立を目指し検討を行った。その結果、フェニルアルキルタイプ、約20種類およびアミドタイプ、約10種類の誘導体を網羅的に合成することに成功した。さらに、これら合成化合物のフコシダーゼに対する阻害効果を検討したところ、フェニルアルキルタイプの誘導体においては、最高5ナノモルのIC50値を示す極めて強力な阻害剤の創製に成功した。一方、アミドタイプにおいても、最高20ナノモルのIC50値を示す化合物の合成に成功した。これら両化合物は、既存の強力な阻害剤であるフコノジリマイシンを遥かに凌駕する阻害活性を示していることから、デザイン化合物の正当性を証明できたと考えている。さらに、フェニルアルキルタイプの化合物においては、様々なグリコシダーゼとの阻害選択性についても検討した結果、フコシダーゼを極めて選択的に阻害することも明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまで合成した誘導体の構造ー活性相関を踏まえ、さらなる誘導体の合成および活性評価を継続し、より強力で選択的な阻害剤の創製を目指す。さらに、活性評価を進め、フコシダーゼに対する細胞レベルでの阻害効果あるいは、実際の抗菌作用を検討する。また、もう一つのターゲットであるラムノシダーゼの選択的かつ強力な阻害剤のデザインおよびその網羅的な合成ルートの確立を目指す。具体的には、天然物であるスェインソニンの構造を基に新規阻害剤のデザインを行い、各種誘導体の合成にも適用可能な柔軟な合成ルートの開拓を行う。さらにラムノシダーゼに対する阻害効果を検討し、その結果得られる各種誘導体の構造ー活性相関を踏まえ、さらなるデザインと合成を継続し、フコシダーゼよりもより数が少ないラムノシダーゼ阻害剤として新規化合物の創製を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度、すでに精密有機合成に不可欠のスターラー付き低温反応装置を本研究費で揃えたことから次年度は、本装置をフルに活用してさらに有望なフコシダーゼ阻害剤の合成およびラムノシダーゼ阻害剤の柔軟な合成ルートの開拓を目指し、合成研究を展開する予定であり、消耗品(有機合成用試薬類、有機合成用溶媒類、からむクロマトグラフィー用シリカゲル類、フコシダーゼおよびラムノシダーゼ阻害活性評価に関わる試薬類)とこれらの成果を公表するための学会発表用旅費に特化して研究費を使用する予定である。
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